特定小電力無線局

特定小電力無線局とは

特定小電力無線局は、電波法に基づき、免許が不要で利用できる無線局の一種です。総務省令で定められた特定の周波数帯と出力の範囲内で使用することができ、日常生活やビジネスの様々な場面で活用されています。

定義

電波法施行規則第6条第4項第2号において、特定小電力無線局は「総務大臣が別に告示する電波の型式及び周波数並びに空中線電力に適合するもの」と定義されています。用途に応じて使用できる周波数帯が定められており、無線設備は技術基準に適合している必要があります。

用途

特定小電力無線局は、その用途によって様々な周波数帯が規定されています。

テレメーター、テレコントロール、データ伝送：遠隔地での機器制御やデータ通信に利用されます。
医療用テレメーター：病院や医療機関での生体信号の伝送に用いられます。
体内植込型医療用データ伝送、遠隔計測：体内に埋め込まれた機器と外部機器間でのデータ送受信に使用されます。
国際輸送用データ伝送：国際輸送における貨物や機器間でのデータ伝送に利用されます。
無線呼出：ページングシステムなどに使用されます。
ラジオマイク：音声の無線伝送に用いられます。
補聴援助用ラジオマイク：聴覚障害者の補聴を支援するための音声伝送に用いられます。
無線電話：音声通信に利用されます。
音声アシスト用無線電話：視覚障害者の歩行支援のための情報伝送に利用されます。
移動体識別：RFIDなどのシステムで、移動する物体を識別するために利用されます。
ミリ波レーダー：ミリ波帯の電波を用いたレーダーシステムに利用されます。
移動体検知センサー：人や物体の位置や動きを検知するセンサーに利用されます。
人・動物検知通報システム：人や動物の行動を監視し、異常を検知した際に通報するシステムに利用されます。

概要

特定小電力無線局は、免許や登録などの手続きが不要で使用できる利便性があります。しかし、技術基準に適合した無線設備を使用する必要があり、適合表示無線設備（技適マーク付きの機器）でなければなりません。出力は1W以下に制限されており、他の無線局の運用を妨害しない機能が求められます。また、無線機器は容易に分解できない構造である必要があり、利用者が改造や分解を行うことは禁止されています。

表示

適合表示無線設備には、技適マークと技術基準適合証明番号または工事設計認証番号の表示が義務付けられています。特定小電力無線局を表す記号は、技術基準適合証明番号の英字の1字目「Y」です。改造された機器からは、技適マークを除去する必要があります。

用途毎の詳細

各用途における詳細な技術基準は、総務省告示や電波産業会（ARIB）の標準規格で定められています。周波数、電波の型式、空中線電力、占有周波数帯幅、通信方式などが規定されており、これらの規格を遵守する必要があります。

主な標準規格

ARIB STD-T67: 400MHz帯及び1,200MHz帯のテレメーター、テレコントロール、データ伝送用
ARIB STD-T93: 315MHz帯のテレメーター、テレコントロール、データ伝送用
ARIB STD-T108: 920MHz帯のテレメーター、テレコントロール、データ伝送用

旧技術基準による機器の使用期限

2005年12月の技術基準改正以前に認証された機器には使用期限が設定されていましたが、コロナ禍の影響により「当分の間」延期されています。ただし、旧技術基準の機器は、他の無線局の運用に妨害を与えない場合に限り使用可能です。

技適未取得機器を用いた実験等の特例

技術基準適合証明を受けていない機器でも、一定の条件下で実験等無線局として使用できる特例が設けられています。この特例は、主にテレメーター、テレコントロール、データ伝送用の920MHz帯の機器に適用されます。

沿革

特定小電力無線局の制度は、1989年に小電力無線局の一種として制度化されました。当初は出力が0.01Wと小さく、用途も限定されていましたが、その後、技術の進歩や社会のニーズに合わせて、様々な用途が追加され、出力も1Wに緩和されました。

主な沿革

1989年: 制度化、最大出力0.01W、テレメーター、テレコントロール、データ伝送、無線呼出、ラジオマイク、無線電話の用途を規定
1992年: 移動体識別用が追加
1995年: ミリ波レーダー用が追加
1997年: 補聴援助用ラジオマイク用が追加
2000年: 400MHz帯の特定小電力無線局を再編、ミリ波画像伝送用とミリ波データ伝送用を追加
2001年: 音声アシスト用無線電話用と移動体検知センサー用を追加
2005年: 体内植込型医療用を追加
2006年: 国際輸送用データ伝送用を追加
2008年: 動物検知通報システム用を追加
2011年: 最大出力1Wに緩和、920MHz帯を割り当て
2015年: ミリ波画像伝送用とミリ波データ伝送用を削除
2016年: 動物検知通報システムを人・動物検知通報システムに改称
2019年: 技適未取得機器を用いた実験等の特例を規定

出荷台数

特定小電力無線局を含む免許不要局の出荷台数は、総務省が定期的に調査し公表しています。これにより、電波利用の状況を把握し、政策に反映させることを目的としています。

廃止された用途

かつて利用されていたミリ波画像伝送用、ミリ波データ伝送用は廃止されています。また、920MHz帯への移行を促進するため、一部の周波数帯で終了促進措置が実施されました。

まとめ

特定小電力無線局は、免許不要で利用できる便利な無線システムですが、技術基準を遵守し、安全に利用する必要があります。本記事が、特定小電力無線局に関する理解を深める一助となれば幸いです。

関連情報

小電力無線局
総務省電波利用ホームページ: 特定小電力無線局に関する情報
電波産業会（ARIB): 各種標準規格を策定

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