狩野周信

狩野周信（かのう ちかのぶ）は、万治3年（1660年）に生まれ、享保13年（1728年）に没した江戸時代の絵師です。江戸幕府の御用絵師であり、狩野派の中でも最も格式の高い奥絵師四家のひとつ、木挽町狩野家の三代目を務めました。幼名は生三郎、初名は右近、如川、泰寓斎と号しました。

父は同じく絵師の狩野常信、母は狩野安信の娘という絵師一族の血筋です。弟には岑信、甫信、子には古信がいます。

19歳で4代将軍徳川家綱にお目見えし、絵師としての道を歩み始めます。宝永7年（1710年）には10人扶持を受け、正徳3年（1713年）に父・常信が亡くなったため、木挽町狩野家の家督を継承しました。

享保4年（1719年）には法眼に叙せられ、中務卿と称しました。『徳川実紀』には、常信の没後、徳川吉宗が周信に絵画の指導を仰いだと記されています。将軍の寵愛を受けた周信ですが、そのことが慢心を生んだという逸話も残っています。湯浅常山がまとめた『文会雑記』には、弟子の長谷川如辰の言葉として、周信の画風が崩れ、自信過剰になっているという悪評が伝えられています。

享保13年（1728年）、69歳で亡くなり、池上本門寺に葬られました。平成14年（2002年）には、同寺の五重塔の解体・修理に伴う周辺整備事業で周信の墓が発掘調査され、筆箱、香箱、眼鏡、煙管、毛抜き、印籠、刀子、銭貨などの副葬品が確認されました。

作風に関しては、父・常信に比べて繊細で筆力が弱く、見るべき作品は少ないという評価もあります。弟子には、鳥山石燕、理豊女王、仙台藩お抱え絵師の荒川周良（如慶）などがいます。

参考文献

静岡県立美術館編集・発行 『狩野派の世界 ─静岡県立美術館蔵品図録』 1999年7月24日
佐々木英理子（板橋区立美術館）編集 『板橋区立美術館所蔵 狩野派全図録』 板橋区立美術館発行、2006年4月

もう一度検索