獨協中学校・高等学校

獨協中学校・高等学校（どっきょうちゅうがっこう・こうとうがっこう）は、東京都文京区関口に位置する私立男子中学校・高等学校です。学校法人獨協学園によって運営されており、中学から高校までの一貫教育を特色としています。

沿革

本校の歴史は、明治維新後の1883年（明治16年）に設立された獨逸学協会学校に始まります。当時の日本が近代化を進める中で、ドイツの文化や学術を学び、教育の振興に貢献することを目指して設立されました。

開校当初はドイツ語教育に重点が置かれていましたが、第一次世界大戦でのドイツ敗戦は学校に大きな影響を与えました。ドイツ語学習を志す生徒数が激減し、昭和初期には学校経営が困難な状況に直面します。日独伊三国同盟の成立によって一時的に人気は回復したものの、第二次世界大戦後、日本の法体系や教育制度がドイツ式からアメリカ式へと移行する中で、旧制獨協中学校は再び存続の危機に立たされます。連合国軍総司令部（GHQ）に対して、『獨協』が『獨逸学協会』の略ではなく『独立協和』の略であると説明するなど、苦しい時期を乗り越えました。

戦後の混乱が落ち着いた1952年（昭和27年）、母校の再建を願う第13代校長・天野貞祐氏（後に文部大臣も務める）が就任します。氏の掲げた「人間教育」という理念と強い指導力によって、学校は再び活気を取り戻し、中学校・高等学校として復興を遂げました。1947年には「独協」と表記を改めて一時凌いだ時期もありましたが、1953年には獨逸学協会の名を冠した「獨協」表記に戻っています。

教育制度においては、1997年に中高一貫教育が導入され、2000年には高校からの生徒募集を停止し、2002年に完全な中高一貫校となりました。近年では、入試制度やクラス編成に変更が加えられ、常に時代の変化に対応しています。2023年には創立140周年を迎え、獨協医科大学との連携による新たな推薦枠も設けられました。

教育理念

本校の教育は、第13代校長である天野貞祐氏の言葉に基づいた「人間教育」を根幹としています。その理念は、「気品ある人間の育成」に集約されます。具体的には、正しい心構えと健康な身体を持ち、知性と豊かな情操を備えた人物を育むことを目指しています。生徒一人ひとりが人間としての自信と誇りを持ち、自身の才能を伸ばし、長所を生かせるよう指導します。そして、将来社会に出た際に、日々の生活に感謝と喜びを見出し、勤勉に努力することで社会に貢献し、広く文化の創造に寄与できる人物となることを期待しています。教育に対する深い情熱と、人間の成長を重視する姿勢こそが、本校の教育精神です。

教育システム

6年間の一貫教育を効果的に進めるため、本校では独自の「2-2-2制」教育区分を採用しています。中学第1・2学年の前期2年間を「第1ブロック（基礎学力養成期）」とし、学習の土台をしっかりと築きます。中学第3学年・高校第1学年の中期2年間は「第2ブロック（学力伸張期）」として、応用力や発展的な学習を進めます。そして、高校第2・3学年の後期2年間は「第3ブロック（学力完成期）」として、大学進学に向けた最終的な学力定着と発展を図ります。この段階的な教育によって、生徒は無理なく着実に学力を向上させることができます。

施設

現在の校舎は、1998年に竣工したモダンなデザインの建物です。「光と、風と、緑の創造空間」をコンセプトに設計され、日本建築学会作品選奨にも選ばれています。地上5階、地下1階建ての本校舎は、部室棟と共に中庭グラウンドを囲むように配置されており、開放感と機能性を両立しています。ほとんどの教室にはプロジェクターが設置され、ICTを活用した授業が行われています。その他、1983年に完成したスポーツ設備を備える100周年記念体育館などがあります。

部活動・委員会

2024年現在、本校には多岐にわたる32の部活動と1つの同好会、6つの委員会があります。生徒の自主性を育む活動の場として重視されていますが、近年は部活動に参加しない生徒が増える傾向も見られ、中には廃部や活動縮小の危機に瀕している部活動も存在します。部活動の運営上、中学と高校で明確に活動が分かれているのはサッカー部と野球部のみですが、他の部活動でも中学と高校で活動内容や練習量が異なる場合があります。

著名な学校関係者・出身者

本校からは、政界、経済界、学術界、文化芸術界など、幅広い分野で活躍する多くの人材が輩出されています。創立に貢献した西周や桂太郎、再建に尽力した天野貞祐といった歴代校長や、津田左右吉、金栗四三のような教職員経験者も著名です。出身者には、司法大臣や検事総長を務めた小山松吉、世界銀行副総裁の勝茂夫、財務省事務次官の勝栄二郎といった経済界の要人、医学者では森於菟、額田豊、佐々木隆興、田村憲造、内村祐之、長崎原爆で亡くなった角尾晋などがおり、医学分野で多くの専門家を育てています。文化人では、詩人の大町桂月、作家の巖谷小波、木下杢太郎、芥川賞作家の古井由吉、俳人の水原秋桜子、古今亭志ん朝、大沢悠里、SAM（TRF）、Ryo（ケツメイシ）など、多方面で活躍する人物を数多く輩出しています。

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