玉川温泉 (秋田県)

玉川温泉：日本一強酸性の湯と歴史、そして現代

秋田県仙北市に位置する玉川温泉は、その強い酸性と豊富な湯量で知られる温泉です。古くから湯治場として利用され、現代においても独特の歴史と魅力を持つ場所となっています。

強酸性と豊富な湯量

玉川温泉の最大の特徴は、その強い酸性です。pH1.05という強酸性泉は、「大噴」と呼ばれる湧出口から毎分9000リットルもの湯が湧出しており、単一の湧出口からの湧出量としては日本一を誇ります。この強酸性泉は、塩酸を主成分とする含二酸化炭素・鉄（II）・アルミニウム-塩化物泉に分類されます。大噴の下流には、湯の花採取のための樋が設置されています。

効能と禁忌

玉川温泉には、高血圧症、動脈硬化症、婦人病、神経痛、皮膚病、喘息など、様々な効能があるとされています。ただし、すべての症状に効果があるわけではなく、特に「悪性腫瘍（癌）に効く」という宣伝文句は、医学的に根拠がないことを理解しておくべきです。玉川温泉においても、癌は禁忌症とされており、癌を理由とした湯治は自己責任で行われる必要があります。

玉川温泉は放射能を有するラジウム温泉の一種であり、岩盤浴での年間被曝量は15～20ミリシーベルト程度とされています。この放射能がホルミシス効果をもたらすという説も存在しますが、科学的に確立されたものではありません。

歴史と変遷

玉川温泉は1680年（延宝8年）、地元のマタギによって発見されました。発見当初は「鹿の湯」または「鹿湯」と呼ばれ、傷を癒す鹿の姿が見られたことに由来します。「澁黑温泉」という名称でも知られていました。

本格的な湯治場として開かれたのは1885年、鹿湯という名称でです。その後、五代目関直右衛門の開発により、1934年に現在の玉川温泉と改名されました。改名は朝日新聞記者の杉村楚人冠によるものです。杉村は雑誌『アサヒグラフ』で玉川温泉を紹介し、その名を全国に広めました。

戦前までは交通の便が悪く、開発は遅れていました。1950年の国道とバス路線の開通を機に開発が進み、1974年に阿部真平が出版した『世界の奇跡玉川温泉』以降、癌との関連性が特に注目されるようになりました。しかし、繰り返しになりますが、癌に対する効果は医学的に証明されていません。

1959年には、国民保養温泉地に指定されています。

玉川毒水と環境問題

玉川温泉の強酸性泉は、かつては「玉川毒水」と呼ばれ、田畑を枯らし、魚を殺すなど、周辺環境に悪影響を与えていました。江戸時代から水質改善の試みが行われてきましたが、効果は限定的でした。

1940年代からは、田沢湖への排水による水質緩和事業が行われましたが、田沢湖の生態系に深刻な被害をもたらし、クニマスなど多くの魚類が絶滅しました。その後、簡易石灰石中和法や玉川ダムの建設などにより、水質改善が進められ、現在では基準地点付近でpH6.8にまで回復しています。しかし、田沢湖の水質回復は依然として課題となっています。

宿泊施設とアクセス

玉川温泉は、八幡平の秋田側に位置する山中の温泉地です。かつては一軒宿でしたが、現在では複数の宿泊施設があります。代表的な宿泊施設として、玉川温泉（本玉）、新玉川温泉（新玉）、かつて営業していたぶなの森玉川温泉湯治館そよ風などがあります。これらの施設は、源泉からの距離によって湯の刺激が異なり、新玉やそよ風の方が刺激が少ないとされています。

アクセスは、秋田新幹線・JR田沢湖線田沢湖駅から羽後交通バス、またはJR花輪線から秋北バスが利用可能です。自家用車の場合、東北自動車道盛岡ICまたは鹿角八幡平ICから国道経由でアクセスできますが、冬季は国道341号の一部区間が通行止めとなるため、注意が必要です。

その他

玉川温泉では、岩盤浴も人気です。しかし、2012年には雪崩事故が発生し、岩盤浴場は冬季閉鎖となっています。また、玉川温泉と台湾の北投温泉は、北投石の存在から姉妹温泉の縁組をしています。2005年の調査では、がん患者に対する精神的な効果も報告されています。玉川温泉は、その歴史、自然、そして現代の取り組みを通して、多くの魅力を持つ場所と言えるでしょう。

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