玉林院 (長野県上松町)

玉林院（ぎょくりんいん）

玉林院は、長野県木曽郡上松町にある臨済宗妙心寺派の寺院です。山号は聖岩山。

歴史

玉林院は、天正7年(1579年)に定勝寺六世の玉林聖賢によって開山されたと伝えられていますが、玉林聖賢の没年が天正7年であることから、実際にはそれ以前の開山と考えられています。玉林聖賢は木曾氏の一族であり、上松氏の祖である木曾家信とも縁のある人物です。この地が木曾氏と上松氏にとって重要な場所であったことが窺えます。

玉林院の境内は、背後の天神山にあった上松館の出城としての役割も担っていたと考えられています。上松館は木曾氏の拠点の一つであり、玉林院はその防衛施設の一部として整備された可能性があります。上松義豊が、玉林聖賢を招いたという伝承も残っています。

16世紀末、木曾義昌と上松義豊が関東に移封された後も、玉林院は上松宿や周辺住民の信仰を集め続けました。二世から四世までの住持は不明ですが、その間は上松下町の千村氏が出た生雲鐡公が法灯を守っていました。

寛文年間（1661～1673年）になると、葬儀や法事を中心に寺の運営が始まり、墓碑が建てられるようになりました。五世住持の大眞元愚の代には、檀家から田畑の寄進を受け、その名が刻まれた石碑が残っています。六世の津龍知問は寺院としての外観と内容を充実させました。

明治26年（1893年）には火災で本堂などが焼失しましたが、村人たちの尽力により耐火構造の土蔵造りの寺院として再建されました。その後、昭和38年（1963年）に本堂が新築されました。平成9年（1997年）には、大本山妙心寺から林宏樹が十八世住持として迎えられ、盛大な入寺式が行われました。

寺宝

玉林院には、県宝に指定されている「絹本著色玉林和尚像」があります。この仏像は永禄7年（1564年）に制作されたもので、玉林聖賢の姿を描いた貴重な文化財です。また、大般若経も寺宝として伝えられています。

境内

玉林院の境内には、山門と洪鐘があります。山門は、二階建ての鐘撞堂を兼ねた楼門で、上松町最古の楼門建築として町指定有形文化財に指定されています。現在の鐘は五代目で、天保3年（1832年）に新鋳されたものです。鐘楼門は、入母屋造り銅板葺きで、外壁は真壁造り素木板張り、上層部は柱のみの吹き放しとなっています。

本堂は、昭和38年（1963年）に再建されたもので、入母屋造り銅板葺き、平入りです。外壁は真壁造り白漆喰仕上げ、腰壁は下見板張りとなっています。総門は切妻銅板葺きの薬医門です。

土蔵は元禄年間（1688～1704年）に五世の大眞元愚によって建造されたものです。

庭園は、江戸時代初期に作られたもので、小さいながらも鶴島と亀島があり、木曽の名園の一つとして知られています。

参道には、高遠石工の守屋貞治の作とされる馬頭観音石像と延命地蔵石像があります。その他、西国四国秩父坂東巡礼供養塔や子育地蔵石像なども祀られています。

上松館

上松義豊は、上松氏を名乗り、木曾氏の有力一族として活躍しました。上松館は、その居館であった場所です。上松義豊は、織田信長への人質にもなっていました。上松義豊は、兄である木曾義昌が、徳川家康の関東移封に伴い下総国海上郡阿知戸へ国替されたことから、上松氏館は廃城になったと考えられています。

上松館跡には天神社が勧請され、境内には多くの枝垂れ桜があり、その中でも最大のものは「天神様の桜」と呼ばれ、地域住民に親しまれています。また、境内にある黒松は、推定樹齢300年ほどの古木で、上松町の天然記念物に指定されています。

上松館は「天神山木曽氏館跡」として上松町指定史跡に、しだれ桜は上松町指定天然記念物に指定されています。

春には、玉林院から徒歩3分の場所にある天神山のしだれ桜が楽しめます。玉林院の山門と、天神堂横の枝垂れ桜は、美しい景観を作り出しています。

関連リンク

玉林院　長野県公式観光サイト

参考文献

『上松町誌 第二巻 民俗編』　第四節　上松のお寺・お堂　一　上松の寺・堂　2　聖岩山玉林院　p229～p237　上松町誌編纂委員会　平成12年

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