玉椿憲太郎

玉椿 憲太郎の生涯とその影響

玉椿 憲太郎（たまつばき けんたろう、1883年11月10日 - 1928年9月19日）は、富山県の出身で、雷部屋に所属していた大相撲力士である。彼の本名は森野 健次郎であり、小柄な体格でありながらも、その卓越した技術としぶとさで一時代を築いた。身長159cm、体重90kgという現在では考えられない小兵ながら、関脇にまで昇進し、「名人」や「怪力士」と呼ばれるほどの存在感を誇った。

力士としての出発

玉椿の力士としての道は、父と兄が草相撲の強者であったことからインスパイアされ始まった。1895年頃、知人の紹介で梅ノ谷を通じて雷部屋に入門し、1897年1月場所で初土俵を踏む。当初は四股名を湊山とし、1900年には短期間ながら玉ヶ関に改名したが、亡き兄弟に敬意を表してのことだった。その後、幕下に上がると新たな四股名「玉椿」を名乗るようになる。

幕内での活躍

1903年に新入幕を果たすと、玉椿は小結や関脇として活躍を続け、1907年には関脇に昇進し、以降も三役に安定して在位する。1911年には新橋倶楽部事件において、大部分の力士がストライキを行う中、彼は自身の信念を貫きストライキに参加せず、結果として他の力士から敵視される原因となった。この時の彼の行動は非常に勇敢であり、力士としての義務感が強く表れていた。

引退と後の人生

1916年1月、成績が低下していたため引退を決意。その後は年寄白玉として活動を始めるが、新橋倶楽部事件の影響で冷遇され、役職にも就けずじまいだった。早稲田大学で相撲師範を務めながら、1927年に夢の白玉部屋を開設するも、1928年に心臓病が悪化してその生涯を閉じた。44歳という若さでの死は多くの人々を悲しませた。彼の墓所は東京都葛飾区亀有の蓮光寺にある。

特徴的な取り口

身長159cm（実際には154cmかもしれないともいわれている）、体重90kgの小柄な彼だったが、稽古には非常に熱心で、「おまえと稽古すると気分が悪くなる」と周囲から言わしめるほどであった。彼の取り口は、平蜘蛛からの低い姿勢で、懐に入り込むスタイルであり、しぶとさから「ダニ」と呼ばれていた。得意技は左差し、食い下がり、頭捻り、足癖などである。

当時の横綱だった常陸山は、「これまで一番強い関取は誰か」と問われると、即座に玉椿と答えた。対戦成績は芳しくはなかったものの、彼の執拗さは一度も勝てなかった常陸山をも苦しめ続けた。特に1907年の対戦は名勝負として語り継がれ、以降の試合では友情ともいえる関係が生まれたとも伝えられている。

最後に

玉椿の相撲人生は、決して平坦ではなかったが、彼の技巧と精神力は今なお多くの力士たちへの刺激となっている。彼の歩んだ道は、後の世代にとっても尊敬されるべきものであり、その存在は相撲界から決して忘れ去られることはないだろう。

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