玉虫七郎右衛門

玉虫七郎右衛門は、江戸時代前期に活躍した武士で、赤穂藩浅野家に仕えた家臣です。生没年は不詳で、詳しい出自についても記録は残っていませんが、越後国の豪族である城氏の一族、玉虫氏の出身であると考えられています。赤穂藩では番頭という役職に就き、400石を領していました。

玉虫七郎右衛門の名が歴史に登場するのは、赤穂藩が改易された後のことです。藩の存亡に関わる重大な局面で、玉虫は開城派に属しました。筆頭家老の大石良雄らが籠城を主張する中、玉虫は末席家老の大野知房を支持し、同じく籠城派の足軽頭原元辰や札座奉行岡島常樹兄弟らと対立しました。元禄14年4月12日（1701年5月19日）には、孤立した大野が赤穂を逐電するという事態に至りますが、玉虫はその後も赤穂城の開城まで藩に残りました。

しかし、玉虫はその後、大石良雄が主導した吉良邸討ち入りの盟約には加わることはありませんでした。赤穂城開城後、玉虫は赤穂を去り、その後の消息は全く不明です。このため、彼は討ち入りに参加した同志たちとは異なる道を歩んだことになります。

玉虫の人となりについて、同僚の番頭であった岡林直之とともに、神崎則休が『赤城盟伝』の中で「臆病也」と評しています。この評価が、当時の玉虫の行動や決断を物語る一つの側面であるとも言えるでしょう。しかし、玉虫の組に属していた藩士の中には、中村正辰、礒貝正久のように吉良邸討ち入りに参加した者もおり、一概に「臆病」と断定することもできません。

玉虫七郎右衛門は、赤穂藩という動乱の時代を生きた武士の一人です。開城派に属したこと、大石良雄の盟約に加わらなかったこと、そして「臆病」と評されたことなど、様々な要素が絡み合い、彼の人物像を複雑なものにしています。歴史の中で埋もれがちな存在ではありますが、赤穂事件における多面的な側面を象徴する人物の一人と言えるでしょう。

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