王偉 (南北朝)

王偉（おう い）

王偉（生年不詳 - 大宝3年5月18日（552年6月25日））は、中国南北朝時代の梁 (南朝)において、侯景に仕えた謀臣です。本貫は陳留郡ですが、祖先は略陽郡の出身とも伝えられています。

生涯

北魏の許昌県令であった王略の子として生まれました。若い頃から才能と学問に秀でており、侯景が発する文書の作成を任されていました。侯景の下では行台左丞という地位に就いています。

東魏の高歓が重病に陥った際、その子である高澄が偽の信書を作成し、侯景を呼び出そうとしました。この時、王偉は高澄の策略を見抜き、侯景に進言して赴くのを止めさせました。

太清元年（547年）2月、侯景は南朝梁に降伏しました。同年8月、梁の武帝は蕭淵明を都督として東魏討伐の軍を起こしましたが、11月に蕭淵明は敗北し東魏に捕らえられました。12月、王偉は侯景の命を受け、武帝のもとに使者として赴き、北伐を支援するよう要請しました。武帝はこれを受け入れ、元貞を魏主として擁立しました。

太清2年（548年）8月、侯景は南朝梁に対して反乱（侯景の乱）を起こしました。王偉は侯景に対し、梁の都である建康へ直ちに侵攻するよう進言し、侯景は王偉の戦略に従いました。また、朱异や徐驎といった姦臣を除去することを大義名分とするよう勧めました。12月、侯景軍は梁の援軍に包囲され、兵糧が不足する事態に陥りました。王偉は任約を城北に派遣して講和交渉を行うよう献策し、武帝がこれを受け入れたため、王偉が建康に入城して盟約を交わしました。しかし、侯景は建康の包囲を続け、和約を反故にしました。

太清3年（549年）3月、建康が陥落すると、王偉は侯景の命により武徳殿を守備しました。王偉が入朝して武帝に謁見した際、武帝から侯景を呼ぶよう求められ、これによって武帝と侯景の対面が実現しました。11月、王偉は儀同三司の位を与えられました。

大宝元年（550年）7月、王偉は中書監に任じられました。

大宝2年（551年）1月、尚書左僕射となりました。8月、侯景に帝位簒奪を勧めたものの、簒奪そのものには反対し、簡文帝を廃位して豫章王蕭棟を擁立しました。同年10月、王偉は簡文帝に酒を勧めて泥酔させ、その身体の上に大量の土嚢を積み重ねて圧死させました。同年11月、蕭棟が廃位され、侯景が自ら皇帝に即位すると、王偉は侯景の祖先を祀る七廟を建立するよう上奏しました。

太始2年（552年）3月、王僧弁が建康を攻撃すると、王偉は索超世や呂季略らと共に台城を守備しました。侯景が建康からの撤退を企てたため、王偉は強く諫めましたが、侯景は聞き入れず、王偉に台城を任せて逃亡しました。王偉は侯子鑑と共に逃走しましたが、途中ではぐれて草むらに隠れていたところを、直瀆戍主の黄公喜に捕らえられ、王僧弁のもとに送られました。江陵に連行された王偉は、獄中から湘東王蕭繹に詩を贈りました。蕭繹は王偉の才能を惜しみましたが、多くの臣下が王偉を憎んでいたため、王偉が書いた檄文に「湘東一目」（湘東王は片目である）という表現があると蕭繹に告げました。片目が不自由であった蕭繹は激怒し、5月、王偉は江陵の市で処刑されました。処刑の際、舌を柱に釘で打ち付けられ、腸を引きずり出されるという残虐な方法が用いられましたが、王偉は平然とした表情を崩さなかったと伝えられています。王偉は生きたまま身体を切り刻まれ、骨になるまで刑が執行されました。

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