王商 (蠡吾)

王商（おう しょう）

王商は、前漢時代に活躍した政治家で、紀元前25年に死去した。彼の字は子威で、涿郡蠡吾県の出身である。王商は、漢の宣帝の母方の親戚であり、王翁須の甥にあたる。

略歴

王商は、威厳に満ちた体格で、極めて優れた容貌を持っていたと伝えられている。彼の父、王武は外戚だったために楽昌侯に封じられ、王商は若い時から太子中庶子に任じられた。彼は誠実さと厳格さから多くの賞賛を受けており、甘露2年（紀元前52年）に父が亡くなった後、その地位を継承する。王商は異母弟に財産を分配し、自身は何も受け取らなかった。この態度は大臣たちにも高く評価され、他の群臣の模範となり得るものと見なされたため、彼は近臣として抜擢され、諸曹侍中中郎将に任命された。

元帝の永光3年（紀元前41年）、彼は右将軍に任命され、その頃には王商が劉康を擁護し、皇太子交代の危機を回避したこともあり、彼の影響力は増大していった。劉驁（後の成帝）が即位すると、王商は特に重用され、建始3年（紀元前30年）に左将軍に任命された。しかし、成帝の母方の伯父である王鳳が権力を握っており、王商との関係は必ずしも良好ではなかった。

同年の秋、長安では「洪水が来る」という噂が広まり、民衆の間に恐怖が広がった。成帝は大臣たちを呼び議論を行い、王鳳は成帝や王太后が船に乗り、民は長安城に避難するべきだと主張した。多くの大臣たちがこれに従ったが、王商はこの噂自体が虚偽で民をさらに驚かせるだけだと反対した。その結果、成帝は王鳳の提案を取りやめ、後に噂が事実無根であったことが明らかになると、王商は大いに評価された。

建始4年（紀元前29年）には、王商は丞相の地位に任じられ、成帝から高い信任を受けることとなった。河平4年（紀元前25年）には、匈奴の単于が来朝した際、彼の存在に畏れを抱くほどの威厳を持っていた。成帝は「彼こそ真の丞相である」と称賛した。

しかし、王鳳は王商を妬み、彼の弱みを探りたて上奏させる。成帝は王商を守ろうとしたものの、王鳳の執拗な請願により、王商は遂に丞相の職を解かれることとなった。そのわずか3日後、王商は病に倒れ、死去した。彼の死後、彼の親族も皇帝の近臣から外され、王商の名声は失われてしまう。

大臣たちは、封邑を取り上げるべきだと上奏したが、成帝は王商の長男、王安に楽昌侯を継がせることとなった。王安もまた官位に就くが、後に王莽の陰謀に巻き込まれたことにより自ら命を絶つことになり、封国は没収される結果となった。王商の生涯は、その優れた能力とともに、政治の厳しさや友情の脆さを物語るものである。

参考文献

• - 班固著『漢書』巻18 外戚恩沢侯表、巻19下 百官公卿表下、巻82 王商伝

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