現代俳句協会賞

現代俳句協会賞

「現代俳句協会賞」（げんだいはいくきょうかいしょう）は、日本の主要な俳句団体の一つである現代俳句協会が主催する、権威ある文学賞です。この賞は、現代俳句大賞、現代俳句新人賞、現代俳句評論賞、現代俳句協会年度作品賞など、協会が定める様々な賞の中でも、特に協会員の優れた作品そのものを対象とした最高の栄誉として位置づけられています。長年の功績を称える功労賞としての性格を持つ現代俳句大賞とは異なり、本賞は、現役の協会員が発表した作品の質を評価する点に重点が置かれています。これまでに、文化功労者や日本芸術院会員に選ばれた俳人、また俳壇で権威とされる蛇笏賞の受賞者など、現代俳句史に名を刻む多くの著名な俳人がこの賞を受章しています。

この賞の起源は1947年にまで遡ります。創設当初は、若くして亡くなった才能ある俳人、川端茅舎の名を冠した「茅舎賞」として設立されました。その後、名称は変更され、1954年度に行われた第3回の選考以降、現在の「現代俳句協会賞」という呼称が正式に用いられるようになりました。

現代俳句協会賞の歴史を語る上で、特に重要な出来事として、第9回の選考時に発生した俳壇における大きな分裂が挙げられます。この選考を巡る過程で、俳句における有季・無季といった表現形式に対する見解の相違など、世代間の価値観の対立が顕著になりました。この対立の結果、当時協会の幹事長であった中村草田男氏をはじめとする、多くのベテラン会員が現代俳句協会を離脱するという事態が発生しました。彼らはその後、1961年に新たな俳句団体として俳人協会を設立します。中村草田男氏は、離脱の理由の一つとして、無季俳句を容認できない立場を挙げています。興味深いエピソードとして、この第9回現代俳句協会賞で有力候補と目されながらも、「新人ではない」といった理由から候補リストから外された石川桂郎氏（離脱組の一人である石田波郷の弟子）が、皮肉にも新たに創設された俳人協会の第1回俳人協会賞を受賞しています。石川桂郎氏が現代俳句協会賞の次点であったという説も長らく俳壇で語られていましたが、後の詳細な調査によって、最終的な候補者は赤尾兜子氏と飴山實氏であったことが明らかになっています。

このような歴史的経緯からも理解できるように、現代俳句協会賞は創設当初、新人作家の発掘や育成を奨励する新人賞的な性格も持ち合わせていました。しかし、現代俳句協会自身が現代俳句新人賞を、また俳人協会も俳人協会新人賞をそれぞれ創設・整備したことに伴い、現代俳句協会賞の位置づけは変化しました。現在では、新人賞を受賞した、あるいはそれに匹敵する高い実力を持つ協会員の作品の中から、特に優れたものを選び出す「新人賞の上の賞」として、協会員が発表した作品に対する最高の評価を与える賞としての性格を強めています。これは、日本の三大俳句団体とされる現代俳句協会、俳人協会、そして日本伝統俳句協会がそれぞれ主催する協会賞が、いずれもその協会の会員のみを対象としているという点と共通しています。

選考方法も時代と共に変化し、洗練されてきました。かつては、第67回（2012年度）まで、他の協会員からの推薦を受けた会員が、過去3年間に発表した作品の中から自選した50句を提出し、それをもとに選考が行われていました。しかし、第68回（2013年度）以降、この選考方式は大きく変更されました。現在の選考対象は、協会の有資格者（協会の全役員、参与、地区協会会長、あるいは既に大賞や協会賞を受賞した会員など）による推薦を受けた協会員が出版した個人句集へと変わっています。この変更により、選考は単なる代表句の羅列ではなく、一冊の句集というまとまりのある作品全体を評価する形となり、また、特定の人物が毎年続けて候補となるような状況は少なくなり、より幅広い協会員の優れた句集に光が当たる機会が増えています。

なお、現代俳句協会の会員であれば、たとえ俳人協会や日本伝統俳句協会といった他の俳句団体に同時に所属している場合でも、この現代俳句協会賞の授賞対象となり得ます。現代俳句協会賞は、その創設以来、現代俳句の多様な表現を奨励し、多くの優れた俳人の誕生と活躍を後押ししてきた、日本の俳壇において非常に重要な地位を占める賞と言えるでしょう。

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