現代思潮新社

株式会社現代思潮新社

株式会社現代思潮新社（げんだいしちょうしんしゃ）は、日本における独特な出版社であり、自らの色合いを反映した書籍を多く刊行しています。1957年に出版界に登場したこの会社は、石井恭二の手によって創設されました。最初は「現代思潮社」という名称でスタートし、進歩的な文化人の意向に対抗することを目的に、物議を醸すようなテーマの書籍を発行することを掲げていました。特に、アカデミズムから疎外されていた澁澤龍彦を起用し、彼の編集によりサドの作品を最初に刊行したことが、この出版社の特異性を示しています。

当初の出版方針は、既存の文脈や価値観に挑戦することにありました。「悪い本」とされるような作品を世に問うことは、新たな文化的対話を紡ぐ試みでありました。特に、1961年からは反スターリン主義の思想書や、 leftistではあるが形骸化されつつあった左翼としてのアイデンティティに疑問を呈するような書籍が続けざまに刊行され、この動きは一種の知的反乱とも考えられます。

出版された著作の中には、レフ・トロツキーの全集やニコライ・ブハーリン、ローザ・ルクセンブルクによる著作が含まれます。出版した作品は単なる書物にとどまらず、当時の社会情勢や思想的な対立の具現化となり、読者にとっては強く刺激的なものでした。また、澁澤はこの出版社内での企画に多く関わり、自らも文学的・哲学的な作品を発表する一方、他の作家の翻訳にも尽力しました。

更に、1961年には清水幾太郎による『現代思想』が創刊され、現代の思想家や評論家が寄稿したことにより、思想の深まりを助けました。1962年には『白夜評論』が刊行され、これはモーリス・ブランショやベルトルト・ブレヒトの翻訳を含むなど、文芸色が豊かな誌面となりました。

1967年からは「古典文庫シリーズ」を創刊し、埋もれた古典作品を発掘することにも力を注ぎました。この取り組みは、特定のテーマや作品を持つ大手出版社に対抗する形で進められ、地味な作品の復刻を通じて日本の文芸の多様性を広げました。また、このシリーズを通じて多くの翻訳家や学者の協力を得たものの、出版界の重鎮たちからの圧力により、時には厳しい状況に直面することもあったとされています。

1969年には美学校が設立され、前衛芸術の一大拠点ともなりました。数年後、学校の経営からは離れましたが、それまでの経歴から数多くの若者がこのアートスクールに触発され、参加を希望していました。1996年に石井が経営を離れた後は、2000年に「現代思潮新社」と名称を改めました。

さらに、出版社としての道のりは豊かなものであり、サド裁判などの法廷闘争が発生するなど、文化と法の交差点で多くの注目を集めてきた歴史があります。特に、1959年の『悪徳の栄え・続』に関する事件はその象徴的な出来事となりました。

時代の潮流を反映したこの出版社は、今後も文学や思想の探求を続け、独自の視点を持った作品を世に送り出す役割を担い続けることでしょう。

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