球麻痺

球麻痺（Bulbar Palsy）とは

球麻痺とは、延髄または脳幹外部の下部脳神経の損傷によって生じる、第IX～XII脳神経の機能障害に関連する様々な症状を指します。「球」とは延髄の慣用語で、延髄の外観が丸いことに由来します。

症状

球麻痺の主な症状は以下の通りです。

嚥下障害: 飲食物を飲み込みにくい。
咀嚼困難: 食物をうまく噛み砕けない。
発話障害: はっきりと話すことが難しい。
発声障害: 声を出すことが困難になる。
構音障害: 呂律が回らない。

また、以下の徴候が見られることがあります。

子音の発音不良による鼻声
舌の萎縮
流涎（よだれ）
軟口蓋の閉鎖不全（「あー」と発声させた際に確認）
下顎反射の減弱または消失
絞扼反射の減弱または消失
四肢の下位運動ニューロンの障害（稀）

重症筋無力症とは異なり、眼周囲の筋肉運動は通常障害されません。

原因

球麻痺の原因は多岐にわたります。

遺伝性: 球脊髄性筋萎縮症、急性間欠性ポルフィリン症
血管疾患: 延髄梗塞
変性疾患: 筋萎縮性側索硬化症（ALS）、延髄空洞症
炎症性/感染症性: ギラン・バレー症候群、急性灰白髄炎（ポリオ）、ライム病
悪性腫瘍: 神経膠腫、悪性髄膜炎
毒性: ボツリヌス症、サソリ刺傷（セントルロイデス属）、一部の神経毒性を持つヘビ毒
自己免疫性: 重症筋無力症

鑑別診断

球麻痺と似た症状を呈する疾患として、偽性球麻痺があります。偽性球麻痺は、大脳皮質前頭葉の運動野から伸びる皮質脊髄路（上位運動ニューロン）の障害によって生じ、脳卒中が原因となることが多いです。臨床症状は球麻痺と類似していますが、障害部位が異なります。

治療

球麻痺に対する根治療法は現在のところ存在しないため、対症療法が中心となります。嚥下障害に対するリハビリテーション、栄養管理、呼吸管理など、症状に応じた支援が行われます。

関連項目

進行性球麻痺

参考文献

（参考文献リストは省略）

外部リンク

ICD-10 G12.2
Comparison of bulbar palsy with pseudobulbar palsy

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