瑜伽師地論

『瑜伽師地論』の概要

『瑜伽師地論』（ゆがしじろん、梵: Yogācārabhūmi-śāstra）は、大乗仏教における唯識派の重要な文献です。この書物のタイトルは「ヨーガ行者の階梯についての論」という意味を持ち、100巻から成り立っています。主に、弥勒菩薩の教えを元に、唐の時代に玄奘によって翻訳されました（大正蔵・30）。また、チベットの訳本では「無着所説」という名称で知られています。

著者と背景

本書は、無著（asaṅga、असङ्ग）によって著されたとされています。無着は、弥勒菩薩が住まう兜率天にて教えを受け、この文献を編纂しました。彼の教えは、瑜伽行（yogācāra）に基づいており、瞑想や認識の手法について深く掘り下げられています。

内容の構成

『瑜伽師地論』は、以下の5つの主要な部分から構成されています。

1. 本地分 — ここでは、三乗の思想が展開され、17の異なる段階に関する教えが詳述されています。具体的には、五識身相応地や無心地などが取り上げられ、修行者が進むべき段階が説明されています。
2. 摂決択分 — 本地の中での主要な要義がまとめられています。
3. 摂釈分 — 諸経の儀則が解釈され、仏教教義の理解を深めます。
4. 摂異門分 — 経典の中の様々な法の名義が整理され、仏教の知識が整理されます。
5. 摂事分 — 三蔵に関する要義の解釈が行われます。

この全体を通して、本書は多角的に唯識の教えを探求しており、特に阿頼耶識説や三性三無性説に関する深い考察が見られます。

影響を与えた文献

『瑜伽師地論』は、その後の多くの論書に影響を与えました。例えば、弥勒菩薩を中心に据えた『顕揚聖教論』や、世親が著した『仏性論』などがその例です。また、『成唯識論』においても、本書の教えが基盤となっています。

その他の関連文献

さらに、『大乗荘厳経論』やさまざまな註釈書も存在し、これらは『瑜伽師地論』の内容を基に展開されています。たとえば、『瑜伽論記』や『瑜伽師地論略纂』などがあり、いずれも大乗仏教の観点から重要な位置を占めています。

結論

『瑜伽師地論』は、仏教徒にとって非常に意義深い文献であり、特に唯識派の教えを学ぶ上で不可欠な資料です。この著作は、仏教の深い哲学的および修行的な概念を提供し、信者や学習者に向けて、その知識を広める役割を果たしています。

もう一度検索