生國魂神社

生國魂神社（いくくにたまじんじゃ）

生國魂神社は、大阪市天王寺区生玉町に位置する、歴史ある神社です。「いくたまさん」の愛称で親しまれ、地元の人々から厚く信仰されています。その起源は古く、神武天皇が日本統一の際に、国土の神霊である生島神・足島神を祀ったことに始まると伝えられています。かつては大坂城の地に鎮座していましたが、豊臣秀吉による大坂城築城の際に現在の場所に移されました。

神社の歴史

古代

文献における初出は、『日本書紀』に孝徳天皇が難波宮を造営する際、生國魂神社の樹木を伐採したという記述です。このことから、少なくとも7世紀には既に存在していたと考えられています。平安時代には、朝廷の祭祀にも深く関わり、特に新天皇の即位儀礼である八十島祭では、重要な役割を担っていました。

中世

中世には、現在の大阪城があった場所に隣接して大坂本願寺が建立され、神社は寺院と密接な関係を築きました。しかし、織田信長と本願寺との間で石山合戦が勃発し、社殿は焼失してしまいます。

近世

豊臣秀吉による大坂城築城に伴い、生國魂神社は現在の場所に移されました。その後、豊臣秀頼によって社殿が再建されましたが、大坂夏の陣で再び焼失。江戸時代には、幕府によって再建され、社領も安堵されました。

近代以降

明治維新後、生國魂神社は官幣大社に列せられ、近代社格制度において最高位の格式を得ました。しかし、度重なる火災や戦災により社殿は焼失。現在の社殿は、昭和31年に鉄筋コンクリート造で再建されたものです。

祭神

主祭神

生島大神（いくしまのおおかみ）
足島大神（たるしまのおおかみ）

この二柱の神は、国土の神霊として古くから信仰を集めています。『古事記』や『日本書紀』には記されていませんが、『延喜式』などの古文献にその名を見ることができます。また、八十島祭では主神として祀られ、天皇の国土支配を象徴する重要な役割を担っていました。

相殿神

大物主大神（おおものぬしのおおかみ）

大物主大神は、後世に合祀された神様で、社伝によれば永禄元年に境内の社から本殿に移されました。

祭祀

八十島祭との関わり

生國魂神社の祭神である生島神・足島神は、天皇の即位儀礼である八十島祭と深く関わっています。八十島祭は、新天皇が国土の神霊を体に取り入れ、支配権を確立するための重要な儀式でした。この祭りの祭場・祭神から、生國魂神社の祭祀とも深い関係があるとされています。

その他の祭事

若菜卯杖祭：1月7日、除災招福を祈る祭。
走馬神事：5月5日、城方向八幡宮の祭事。
生國魂祭：7月11日・12日、大阪三大夏祭りの一つ。
大阪薪能：8月11日・12日、かがり火の中で能を奉納。
秋祭：10月15日、初穂を供える祭。

社殿・境内

現在の本殿は、鉄筋コンクリート造りですが、伝統的な「生國魂造」という独特な建築様式が継承されています。境内には、本殿のほか、幣殿、拝殿、回廊、神饌所、儀式殿、社務所などがあり、多くの摂末社も祀られています。かつては蓮池がありましたが、現在は埋め立てられ、生玉公園となっています。

主な摂末社

皇大神宮：天照皇大御神を祀る。
住吉神社：底筒男神、中筒男神、表筒男神を祀る。
天満宮：菅原道真公を祀る。
城方向八幡宮：誉田別命らを祀る、大坂城の守護神。
鞴神社：天目一箇神らを祀る。
家造祖神社：手置帆負神らを祀る。
浄瑠璃神社：近松門左衛門ら文楽関係者を祀る。
鴫野神社：市寸島比売神らを祀る。
源九郎稲荷神社：源九郎稲荷大明神らを祀る。
稲荷神社：倉稲御魂神を祀る、祐徳稲荷神社からの分祀。
精鎮社：事代主神らを祀る。

アクセス

電車：大阪メトロ谷町線・千日前線「谷町九丁目駅」から徒歩約4分。大阪メトロ堺筋線・千日前線「日本橋駅」、近鉄「近鉄日本橋駅」から徒歩約7分。近鉄「大阪上本町駅」から徒歩約10分。

周辺情報

高津宮
法案寺：元は生國魂神社の神宮寺。

参考文献

神社由緒書「難波大社 生國魂神社略誌」、「いくたまさん」
境内説明板
『新修大阪市史 本文編』
『国史大辞典』
『日本大百科全書（ニッポニカ）』
『大阪府の地名 I』
『日本古代史大辞典 - 旧石器時代～鎌倉幕府成立頃』
「難波坐生國咲國魂神社二座」、式内社研究会 編『式内社調査報告 第5巻』
「生国魂神社」、谷川健一 編『日本の神々―神社と聖地〈3〉摂津・河内・和泉・淡路』
「古代天皇の即位儀礼と呪術 <生国魂神社>」、『歴史読本』編集部 編『八百万神をめぐる古代王権の謎』

生國魂神社は、大阪の歴史と文化を今に伝える貴重な存在です。参拝の際は、その歴史と祭神に思いを馳せてみてください。

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