田所稔

田所稔は1932年、北海道浦河町の農家に生まれました。兄弟の多い貧しい家庭環境から、幼少期は伯母の家に預けられます。1950年、すでに騎手として活躍していた実兄・田所秀雄の誘いを受け、兄の師匠であり叔父にあたる小川佐助厩舎（京都競馬場）に入門。厳しい修業を経て、1953年に騎手免許を取得しました。

デビュー戦は残念ながら最下位に終わりましたが、翌週には初勝利を飾ります。その後、1956年には落馬事故で大きな怪我を負い、長期入院を余儀なくされます。この事故をきっかけに、騎手用ヘルメットの採用が促進されたと言われています。

地道な努力を重ね、12年目の1965年にオーヒメで京都記念（秋）を制し、念願の重賞初勝利を挙げます。翌年も同馬で日経新春杯を制覇。さらに、同年から小川厩舎の期待の星・ニホンピローエースに騎乗する機会を得ます。1965年の阪神3歳ステークスを制し、翌1966年にはクラシック競走である皐月賞を制覇。八大競走制覇という偉業を達成しました。

1973年には調教師免許を取得し、騎手生活に終止符を打ちます。騎手通算成績は1527戦179勝。調教師としては、厩舎の空きを待って1975年に開業。移籍馬ジョーアスコットで初勝利を挙げると、1977年には管理馬センターグッドで阪急杯を制し、調教師としても重賞勝利を収めました。その後も複数の重賞勝ち馬を輩出し、競馬界に貢献しました。

しかし、1990年には管理馬から禁止薬物が検出され、調教停止処分を受けます。この処分による精神的な負担が、後の健康状態に影響したのではないかとも言われています。翌1991年、ハワイ旅行中に心臓発作を起こし緊急帰国するも、5月27日に59歳で急逝しました。調教師通算成績は2206戦188勝でした。

田所稔は、厳しい環境を乗り越え、騎手として、そして調教師として数々の栄光を掴んだ人物でした。彼の功績は、競馬史に深く刻まれています。兄や甥、師匠である叔父など、競馬一家に囲まれ育った環境も、彼の成功に少なからず影響を与えたと言えるでしょう。彼の死は、競馬関係者だけでなく、多くの人々に深い悲しみを与えました。彼の功績は、これからも語り継がれていくことでしょう。

主な騎乗馬としては、オーヒメ（[京都記念]1964年、日本経済新春杯1965年）、ニホンピローエース（阪神3歳ステークス1965年、皐月賞1966年、阪急杯1967年）などが挙げられます。主な管理馬としては、センターグッド（阪急杯1977年）、タマムソウ（タマツバキ記念・秋1980年）、ヤクモデザイヤー（小倉記念1986年）などが挙げられます。これらの馬との数々の勝利は、彼の卓越した騎乗技術と調教師としての能力の高さを示すものと言えるでしょう。

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