田村勝夫

田村勝雄：出版界の異才、その生涯と功績

田村勝雄（たむら かつお、1929年2月6日 - 2008年1月28日）は、青森県出身の編集者、出版事業家であり、サイマル出版会の創業者としてその名を知られています。彼の生涯は、激動の時代を背景に、教育者から出版界へと転身し、数々のベストセラーを世に送り出すという、波瀾万丈なものでした。

生い立ちと教育

田村は、青森県中津軽郡東目屋村（現在の弘前市）の農家に生まれました。幼い頃から神童と呼ばれ、その才能を発揮していましたが、家庭の経済的な事情から、青森師範学校（現在の弘前大学教育学部）へ進学します。卒業後、青森県立小学校教員の辞令を受けますが、それを断り上京するという異例の道を選びます。

教員生活と挫折、そして転身

上京後、教育者の小原國芳に師事し、数か月間書生として過ごした後、東京都文京区立汐見小学校に教師として赴任します。教師としての仕事に励む傍ら、民主主義科学者協会で、見田石介の下でマルクスやヘーゲルを学びます。また、見田石介の息子である宗介の担任となり、大きな影響を与えました。しかし、1949年、レッドパージにより教職を追われることとなります。

教壇を追われた田村は、東大職員組合の書記となりますが、過労が原因で喀血し、長野県の小諸療養所と東京都の清瀬病院に長期入院を余儀なくされます。結核療養中、医師の目を盗んで英語やロシア語を独学で学ぶなど、向学心は衰えませんでした。

出版界へ

1958年、東大法学部教授であった田中二郎の紹介で弘文堂に入社し、編集者としてのキャリアをスタートさせます。編集部長として、猿谷要『アメリカの黒人』、竹中労『美空ひばり』、シオドア・ソレンセン『ケネディの道』など、話題性のある書籍を次々と刊行しました。しかし、1967年に弘文堂が倒産（後に再建）してしまいます。

同年、田村はサイマル出版会を設立し、自ら出版事業を開始します。最初の刊行物である『マクルーハン入門』がベストセラーとなり、その後もデイビット・ハルバースタム『ベスト＆ブライテスト』『メディアの権力』など、社会に大きな影響を与えるベストセラーを連発。「名物編集長」として、その手腕を発揮しました。

サイマル出版会の終焉と晩年

数々のヒット作を世に送り出した田村でしたが、1997年11月、サイマル出版会は営業不振のため出版事業を停止することとなりました。2008年、肝臓癌のため死去。享年77歳でした。

田村勝雄は、そのユニークな経歴と、時代を見抜く編集能力で、出版界に大きな足跡を残しました。彼の出版した書籍は、今もなお多くの人々に読み継がれています。

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