田沼意正

田沼意正：波乱の生涯と相良藩への帰還

田沼意正は、江戸時代後期に活躍した大名です。陸奥国下村藩の5代藩主を務めた後、遠江国相良藩へと移り、その生涯は数々のドラマチックな出来事に彩られています。通称は金弥、玄蕃、官位は従四位下・内膳正にまで上り詰めました。相良藩田沼家6代当主という重要な役割を担った人物でもあります。

水野家との縁と田沼家への帰還

意正は、田沼意次の四男として誕生しました。母は側室の田代氏です。安永3年(1774年)、老中水野忠友の養子となり、水野忠徳と名乗ることに。水野忠友の娘と結婚し、将軍徳川家治に御目見するなど、順風満帆な時期を過ごしました。しかし、天明6年(1786年)、実父である田沼意次の失脚により、養子縁組は解消され、田沼家に戻ることになります。この時、母方の姓である田代を称し、田代玄蕃と名乗りました。

下村藩主から相良藩主へ

文化元年(1804年)、陸奥国下村藩主であった従子・田沼意定の死去に伴い、意正は末期養子として田沼本家の家督を相続しました。将軍徳川家斉に御目見し、従五位下・玄番頭に叙任。後に内膳正に昇進します。文化3年(1806年)には大番頭、文政2年(1819年)には若年寄に就任するなど、着実に地位を高めていきました。

相良藩復帰と晩年

文政6年(1823年)、水野忠友の後を継いだ水野忠成の推挙と、将軍家斉の尽力により、旧領である遠江国相良への復帰が叶いました。文政8年(1825年)には側用人に就任し、従四位下に昇進。しかし、天保5年(1834年)には病気のため側用人を辞任。天保7年(1836年)、長男の意留に家督を譲り隠居、同年中に78歳で生涯を閉じました。墓所は東京都豊島区駒込の勝林寺です。

復権の背景

意正の時代の田沼家の相良復帰、そして復権劇は、元来田沼派であった水野家とその後継者である水野忠成の活躍によるところが大きいです。忠成は将軍家斉の信任を得て老中・側用人として出世し、家斉の同意の下、意正を積極的に支援したと考えられています。

家族と系譜

意正の父は田沼意次、母は田代氏です。養父は水野忠友と田沼意定。正室は水野忠友の娘でしたが、後に離縁しています。子には長男の田沼意留、次男の柳生俊能（柳生俊章の養子）がいます。

まとめ

田沼意正の生涯は、養子縁組の解消、家督相続、そして相良藩への復帰と、数々の転換期に見舞われた波乱に満ちたものでした。しかし、それらの困難を乗り越え、高官として活躍した彼の物語は、江戸時代後期の政治情勢を知る上で重要な手がかりとなるでしょう。水野家との複雑な関係性、そして復権劇の裏側には、時代背景や人間関係が複雑に絡み合っています。彼の生涯を紐解くことは、当時の社会構造や権力闘争を理解する上で大きな意味を持つと言えるでしょう。

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