田螺金魚

田螺金魚（たにし きんぎょ、生没年不詳）は、江戸時代中期に活躍した戯作者です。田水金魚、茶にし金魚という別号も使用していました。同郷の医師、鈴木位庵と同一人物であるという説も存在しますが、確証は得られていません。

来歴

詳しい出自や経歴は明らかになっていませんが、江戸の神田で生まれたとされています。安永6年（1777年）に『妓者呼子鳥』を処女作として発表し、洒落本の分野で活動を開始しました。

翌年の安永7年（1778年）には、『契情買虎之巻』を刊行し、梅暮里谷峨や十返舎一九といった洒落本作者たちに影響を与えました。この時期には精力的に作品を発表しており、『一事千金』『淫女皮肉論』『傾城買指南所』などの作品も安永7年（1778年）に刊行しています。その後も、安永9年（1780年）に『多荷論』を発表するなど、安永期の洒落本界隈で独自の存在感を示しました。

主な著作物

『妓者呼子鳥』: 安永6年（1777年）刊行。町芸者の生活を題材とし、実在の芸者であるお豊とお富の名前を借りて、二人の芸者と一人の客との三角関係を描いた作品です。単なる恋愛模様だけでなく、誤解による殺人や女の生霊・死霊といった伝奇的な要素も盛り込まれています。
『契情買虎之巻』: 安永7年（1778年）刊行。高利貸しの鳥山検校が、吉原松葉屋の遊女である五代目瀬川を身請けした出来事を題材にした作品です。
『一事千金』: 安永7年（1778年）刊行。善光寺のご開帳を目当てにした黄表紙風の洒落本です。
『淫女皮肉論』: 安永7年（1778年）刊行。吉原と岡場所を合戦記風に記述した作品です。
『傾城買指南所』: 安永7年（1778年）刊行。勘当された通人が女郎買の指南所を開き、様々な人々に遊びの心得を説くという内容です。
『多荷論』: 安永9年（1780年）刊行。当時流行していた「お世話節」の文句を当てこんで洒落を利かせた作品です。

田螺金魚は、その作品を通して、当時の世相や風俗を反映させながら、独自のユーモアと風刺を交えた世界を描き出しました。彼の作品は、江戸時代の文化や社会を知る上で貴重な資料となっています。

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