甲型魚雷艇

甲型魚雷艇について

甲型魚雷艇は日本海軍に属する魚雷艇の一種で、その計画はT-51a（10号型）とT-51b（11号型）の2つの類型に分かれています。これらの艇は合計で8隻が建造されました。

T-51a

T-51a型は1941年に策定されたマル急計画に基づき建造が計画され、当初は18隻の建造が予定されました。昭和17年度から18年度にかけては4隻、さらに18年度から19年度にかけて14隻の建造予算が臨時軍事費から承認され、実際には1隻が横浜ヨット鶴見工場で建造されました。

従来の魚雷艇が20トン級であったのに対し、T-51a型はドイツの魚雷艇を参考にし、80トン級の大型艇として設計されました。この艇は丸形船底と鉄骨木皮構造によって構築されており、エンジンには国産化された76号6型エンジンを4基搭載しています。これをフルカン式流体継手を用いて2基ずつ結合し、2軸推進方式を採用しました。また、魚雷は左右舷側に2基ずつ合計4基装備されています。

ただし、ドイツ製の魚雷艇は軽合金製であるのに対し、日本では資源の都合から鉄骨木皮による構造が選ばれ、結果的に船体の重量が増えました。このため機関部の重量も増し、さらには構造の強度が低下したため、振動が発生し、全力でも計画速力の30ノットに達しない問題が生じました。その結果、T-51a型は計画では80トンの排水量を想定していたものの、実際には90トンを超える重さとなりました。

T-51b

T-51a型の建造が失敗に終わったため、次のT-51b型では軽量化と工事の簡易化が図られました。流体継手を廃止し、4軸推進に改め、魚雷の数も減少させ、その代わりに機銃を3挺強化しました。T-51bは横浜ヨット鶴見工場で3隻、さらに銚子工場において8隻が建造されました。

しかし、工場の資源能力に問題があったため、建造は遅延しました。欠陥が発覚した後に竣工した艇にはそれを反映させる必要があり、結果的に後続艇の竣工にさらなる遅れが生じました。その結果、7隻が竣工し、1944年の8月以降に進水した艇は工事中止となってしまいました。さらに、10号型の改良版である改⑤計画が計画されましたが、実際には着工されず、建造は中止されました。

結果的に甲型魚雷艇はわずか8隻しか建造されず、その後の乙型は再び20トンクラスに戻る形になりました。著名な海軍研究家の今村好信は、この中途半端な建艦計画と遅延に対して厳しい批評を行っています。甲型魚雷艇の建造経過は、日本海軍の艦艇史において興味深い事例となっています。

関連文献

• - 今村好信『日本魚雷艇物語 日本海軍高速艇の技術と戦歴』（光人社、2003年）
• - 海老原惇「日本海軍艦艇史資料 自昭和16年1月 至昭和20年11月（76）」『世界の艦船』第367号、海人社、1986年8月、150-151頁。
• - 防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書 海軍軍戦備<1> 昭和十六年十一月まで』（朝雲新聞社、1969年）

このように甲型魚雷艇は日本海軍における特色ある艇であり、その設計や運用にはさまざまな苦労が伴いました。

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