甲府代官所

甲府代官所について

甲府代官所は、江戸時代に甲斐国（現在の山梨県）を管轄した幕府の代官所です。1724年（享保9年）に甲斐国が幕府の直轄領となった際に設置され、現在の甲府市中央三丁目に位置していました。この代官所は、甲斐国の政治・経済の中心として重要な役割を果たしました。

立地と歴史的景観

代官所は甲府城の二ノ堀東に位置する武家地にありました。南北に通る道があり、北側には藤川が流れています。代官所の西側には同心組屋敷や牢屋、畑などがありました。長禅寺前にあったことから、「長禅寺前陣屋」とも呼ばれていました。

明治時代になり、代官所跡地は富士川小学校となりました。この地域は、甲府城下町の中心部に位置し、甲州街道が東西に通っていました。

甲府代官所の成立と運営

甲斐国は、戦国時代には武田氏が支配していましたが、武田氏滅亡後、徳川氏の支配下に入りました。甲府は、近世初頭に甲府城が築かれ、甲斐統治の拠点となりました。

1724年（享保9年）に甲斐国が幕府の直轄領となると、甲府町方は老中配下の甲府勤番支配、在方は勘定奉行配下の三分代官支配となり、甲府代官所が設置されました。

初代代官には奥野俊勝が任じられ、当初は東光寺村の帰命院を仮の陣屋としましたが、翌年には現在の場所に移転しました。甲府代官所には、29名の代官が在任し、山梨郡・巨摩郡などを支配しました。代官所には、手付や手代などの属僚が配属され、事務処理を行っていました。

代官の在任期間は比較的短く、他の代官所からの転任が多く見られました。1836年（天保7年）には、郡内地方から発生した天保騒動が発生し、甲府代官所も対応に追われました。1868年（慶応4年）には、甲府代官所は廃止され、府中県役所となりました。

研究史

甲府代官所に関する研究は、上野晴朗氏の「甲府代官支配並びに代官歴代表について」や、『甲府市史』編纂事業、『山梨県史』などで進められています。これらの研究では、代官の変遷や一覧、関連資料などがまとめられています。

歴代代官一覧

以下は、甲府代官所の歴代代官の一覧です。

享保9年 - 享保19年　奥野忠兵衛（俊勝）　勘定組頭・罷免・小普請
享保19年 - 元文4年　山田治右衛門（邦政）　駿府代官、病免・小普請
元文4年　上飯田代官の大久保内蔵助（忠隆）・小川新右衛門預かり
元文5年 - 寛延5年　吉田久左衛門（佳国）　関東代官　関東代官
寛延2年 - 宝暦7年　宮村孫左衛門（高豊） 越前本保代官・駿府代官
宝暦7年 - 明和元年　鵜飼左十郎（実道）　石和代官　関東代官
明和元年 - 明和4年　藤本甚助（久英）　上飯田代官　塙代官
明和4年 - 明和7年　柴村藤三郎（盛膺）　尾花沢代官　駿府代官
明和7年 - 安永2年　小田切新五郎　駿府代官　死去
安永2年　久保平三郎（勝峰）　上飯田代官　石和代官
安永3年 - 安永6年　真野惣十郎（勝照）　石和代官　久美浜代官
安永6年 - 天明4年　中井清太夫（九敬）　上飯田代官　谷村代官
天明4年 - 寛政5年　武島左膳（修茂）　上飯田代官　小普請
寛政5年　風祭求馬（古明）　信州中野代官　鉄砲玉薬奉行
寛政6年 - 文化元年　小笠原仁右衛門（則普）　駿府代官　依願退任
文化元年　川崎平右衛門（定安）　石和代官　寒河江代官
文化2年 - 文政2年　野田松三郎（政晟）　駿府代官　未詳
文政2年 - 文政4年　山本大膳・鈴木伝市郎
文政4年 - 文政11年　小野田三郎右衛門（信利）　関東代官　退任
文政11年 - 天保6年　吉川栄左衛門（貞幹）　石和代官　死亡
天保6年　柴田善之丞（政方）　石和代官　美濃郡代
天保7年 - 天保9年　井上十左衛門（頼紀）　石和代官　小普請
天保9年 - 天保13年　松坂三郎左衛門（久齋）　越後水原代官　西丸切手番之頭
天保13年 - 嘉永3年　小林藤之助　市川代官　代官
嘉永3年 - 安政元年　福田八郎右衛門（道昌）　市川代官　西丸裏門番之頭
安政元年　荒井清兵衛（顕道）　市川代官　桑折代官
安政2年 - 文久元年　寺西直次郎　久美浜代官　納戸頭
文久元年 - 文久3年　福田所左衛門（知）　桑折代官　関東代官
文久3年 - 元治元年　加藤余十郎　市川代官　評定所留役勘定組頭
元治元年　「下総」
慶応元年 - 慶応三年　小笠原甫三郎（義利）　岩鼻代官　関東代官
慶応3年 - 明治元年　中山誠一郎　駿府代官

まとめ

甲府代官所は、江戸時代の甲斐国において重要な役割を果たした幕府の出先機関です。その歴史と運営、歴代代官の変遷は、地域の歴史を理解する上で貴重な情報を提供しています。これらの情報を参考に、甲府代官所についての理解を深めていただければ幸いです。

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