小笠原甫三郎

小笠原甫三郎

小笠原甫三郎（おがさわら すけさぶろう）は、文政3年7月21日（1820年8月29日）に生まれ、明治18年（1885年）11月に没した、幕末の旗本です。諱は義行、後に義利と改めました。実父は旗本・山口茂左衛門で、後に幕臣の小笠原貢蔵の婿養子となりました。小笠原家の屋敷は、下谷辻番屋敷西町裏大番与力地借地にありました。横浜開港資料館には、小笠原甫三郎とその養父である小笠原貢蔵が記した古記録「小笠原家文書」が所蔵されています。

生涯

小笠原甫三郎は、江戸の芝（現在の虎ノ門）で生まれました。幼少期から学問に励み、幕府の鉄砲方である井上左太夫や田付四郎兵衛に西洋砲術を、下曽根金三郎に西洋砲術を、内田弥太郎に数学を、実父の兄である奥村喜三郎に測量を学びました。「小笠原家文書」には、佐久間象山とも親交があったことが記されています。

天保13年（1842年）に小笠原貢蔵の養子となり、弘化2年（1845年）に貢蔵が死去すると、翌3年（1846年）に家督を相続し、小普請入りしました。嘉永元年（1848年）には浦賀奉行所与力に転じ、嘉永2年（1849年）には西洋流砲術を指導するために来た下曽根金三郎の弟子となりました。その後、嘉永6年（1853年）には富士見御宝蔵番に転じ、妻子とともに江戸七軒町（現在の東京都台東区）に移り住みました。また、高畠眉山らと私塾「集成館」を開き、数学や測量を教えました。

嘉永7年（1854年）には支配勘定評定所留役当分助となり、安政2年（1855年）に同留役助、安政5年（1858年）には勘定評議所留役となり、御目見得以上の身分となりました。安政6年（1859年）には小十人組番士に転じました。

文久元年（1861年）には神奈川奉行支配調役（150俵高）となり、「小笠原家文書」には、イギリス公使ラザフォード・オールコックが横浜から香港に行く際に、日本人の水先案内人を長崎まで乗船させる手配をしたこと、イギリス軍艦の修理のために日本人の船大工を軍艦に派遣したこと、横浜で死亡した外国人を増徳院の境内（後の横浜外国人墓地）に埋葬する手配をしたことなどが記されています。

文久3年（1863年）には遠江中泉代官や上野岩鼻代官に転じ、元治元年（1864年）には農兵を率いて天狗党の乱鎮圧に参加しました。その後、関東各地の天領代官を歴任し、代官就任とともに永々御目見以上となりました。

明治維新後は、旧幕臣と江戸商人との間の貸借金整理事業に尽力しました。徳川慶喜に従い静岡藩士となりましたが、明治4年（1871年）に致仕し、明治12年（1879年）に東京に戻りました。明治18年（1885年）11月に死去し、浅草報恩寺に葬られました。彼の葬儀には、交流のあった栗本鋤雲、福地源一郎、榎本武揚らが参列しました。

また、小笠原甫三郎の同僚であった浦賀奉行所与力の中島三郎助が妻に宛てた明治元年（1868年）の手紙には、甫三郎の子供である新太郎が越後（現在の新潟県）で戦死したことが記されています。

人物

小笠原甫三郎は、西洋の学問に精通しており、その知識を活かして幕府の要職を歴任しました。また、私塾を開いて後進の育成にも尽力し、多くの人材を育てました。開国後の横浜では、外国人との交渉や外国人墓地の整備など、国際的な問題にも積極的に関わりました。明治維新後は、旧幕臣の救済に尽力し、その誠実な人柄から多くの人々に信頼されました。

参考文献

石崎康子著「幕臣小笠原甫三郎の生涯」『19世紀の世界と横浜』 山川出版社 1993年 ISBN 4-634-61450-2
西川武臣著 『浦賀奉行所』 有隣新書 ISBN 978-4-89660-218-0
『徳川幕府全代官人名辞典』 東京堂出版 2015年 ISBN 978-4-490-10863-7
『旗本家百科事典』第1巻 東洋書林 ISBN 4-88721-303-4

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