甲良氏

甲良氏について

甲良氏（こうらし）は、江戸幕府の作事奉行の配下として、幕府の大棟梁を代々務めた家系です。その流派は建仁寺流と呼ばれ、初代の甲良宗広から11代目の甲良棟隆まで、約300年にわたりその技術と伝統を継承しました。

甲良氏の主な業績

甲良氏は、主に以下の建築事業に携わりました。

日光東照宮の造営と修理: 甲良氏は、日光東照宮の造営と、その後の修理に深く関わりました。特に、3代目の甲良宗賀は、その功績により、切米100俵と市谷の土地を拝領しました。
江戸城の修復: 江戸時代末期には、安政の大地震によって倒壊した江戸城の修復にも携わりました。10代目の甲良棟全は、この修復工事を実質的な最後の仕事としました。

初代・甲良宗広

初代の甲良宗広は、現在の滋賀県甲良町出身で、左甚五郎の弟子として建築技術を磨きました。慶長元年（1596年）には、京都近衛関白殿御門の建築を担当し、その技術が高く評価されました。現在、甲良町には甲良豊後守宗廣記念館があり、その功績を偲ぶことができます。

甲良氏と市谷

3代目の甲良宗賀は、日光東照宮の修繕の褒美として、市谷の土地を拝領しましたが、自らは千住に屋敷を構えました。この市谷の土地は、後に試衛館となります。現在、東京都新宿区市谷甲良町に、その名を残しています。

甲良氏の終焉

11代目の甲良棟隆の代に明治維新を迎え、甲良氏は廃業しました。しかし、その流派は10代目の子である大島盈株に引き継がれ、彼は初代新橋駅などの鉄道建築物の造営に貢献しました。甲良氏は、11代目の子である伝次郎が昭和21年（1946年）に亡くなったことで、その血筋は途絶えました。甲良氏の菩提寺は、港区芝の正念寺です。

甲良氏歴代当主

1. 甲良宗広
2. 甲良宗次
3. 甲良宗賀
4. 甲良宗員
5. 甲良棟利
6. 甲良棟保
7. 甲良棟政
8. 甲良棟村
9. 甲良棟彊
10. 甲良棟全
11. 甲良棟隆

参考文献

東京都立中央図書館蔵「甲良家文書」
建築雑誌第50輯609号

甲良氏は、江戸時代の建築技術を代表する家系の一つであり、その技術は後世に大きな影響を与えました。彼らの手がけた建築物は、今もなお、その美しさと技術の高さを物語っています。

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