申坦

申坦（しん たん、生没年不詳）は、南朝宋に仕えた武人であり、魏郡魏県を本貫とする申氏の一族に生まれた。

初期の経歴

申坦は、申永（申鍾の孫）の子としてこの世に生を受けた。早くからその才能を発揮し、巴西梓潼二郡太守という地方官を歴任した。元嘉20年（443年）には、梁南秦二州刺史に抜擢され、その行政手腕を期待された。

軍人としての台頭と失脚

元嘉26年（449年）、申坦は武陵王劉駿の下で鎮軍諮議参軍という役職に就き、軍事面での才能を発揮し始める。元嘉27年（450年）には、王玄謨とともに滑台を包囲する作戦に参加するが、この戦いで大敗を喫し、その責任を問われて免官となってしまう。

しかし、その軍事的な才能が完全に失われたわけではなかった。青州刺史の蕭斌の下で、行建威将軍・済南平原二郡太守として再び任官される。元嘉28年（451年）には、碻磝を攻撃するが、またもや敗北を喫し、歴城に撤退することとなった。

劉劭の乱での活躍と悲劇的な最期

元嘉30年（453年）、劉劭が起こした劉劭の乱において、蕭思話が劉劭討伐のために兵を挙げると、申坦は仮の輔国将軍に任じられ、先鋒という重要な役割を担った。同年5月には、京口城を陥落させるという大きな功績を挙げた。

孝建2年（455年）には、寧朔将軍・徐兗二州刺史に昇進する。しかし、大明元年（457年）に北魏が兗州に侵攻してくると、事態は急変する。太子左衛率の薛安都と東陽郡太守の沈法系が迎撃に向かい、北魏軍が撤退した後、申坦は「北魏がたびたび国境を犯すのは、亡命者が手引きしているからだ」と主張し、亡命者を滅ぼすことを提案した。この提案は孝武帝（劉駿）に受け入れられたものの、亡命者たちが情報を察知して逃走。薛安都と沈法系は官位を剥奪され、申坦には棄市の刑が宣告されるという事態に発展した。

群臣が申坦のために弁護するも、孝武帝は聞き入れなかった。しかし、刑が執行される直前に、沈慶之が刑場に駆けつけ、申坦の無罪を訴えた。この訴えが孝武帝に届き、申坦は一命を許されて獄に繋がれることとなった。その後、赦免されて驍騎将軍に任じられたが、間もなく病没した。

子孫の悲劇

申坦の息子たちもまた、戦乱の渦に巻き込まれていく。申令孫は、永光元年（465年）に永嘉王劉子仁の下で左軍司馬・広陵郡太守となったが、明帝の時代に薛安都を討つべく淮陽に入った際、薛索児に投降して殺害された。また、申闡は済陰郡太守として睢陵城に駐屯したが、薛安都の包囲を受け、兄の申令孫の説得に応じて薛索児に投降したものの、やはり殺害された。

申坦一族は、南朝宋の混乱期において、その命運を翻弄された悲劇的な一族であったと言えるだろう。

参考資料

『宋書』巻65 列伝第25
『南史』巻70 列伝第60

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