画所

画所（絵所）について

画所（絵所）は、平安時代に創設された天皇の家政機関の一つで、絵画や意匠の制作を行う組織です。その起源は律令制に基づいたもので、元々は中務省の下に設置された画工司でした。しかし、大同3年（808年）に内匠寮に統合され、以降は内匠寮が画所としての役割を担うこととなります。

画所の設立と発展

画所が成立した背景には、宮廷における屏風や障子といった調度品に対する需要の高まりがあります。この組織は、宮中の美術や装飾を一手に引き受ける形で成長しました。『日本三代実録』に「画所」という名称が登場する仁和3年（887年）よりも前に、すでに成立していたと考えられています。その後、10世紀には内匠寮が作画に関与する記録が見当たらず、画所に業務が集中したと考えられています。

職員構成としては、別当、預、墨画、内豎、熟食などが存在しました。別当は五位蔵人が任命され、画所の外部における責任を負い、預は人員配置や物資調達を担当しました。彼は通常、正六位程度の職位を持つ者であり、12世紀には制作責任者として画師も任命されるようになります。

墨画は制作の中心的役割を持ち、その手法に関しては試験を通じて巧拙が判断されました。平安時代において、墨画と彩色者は共に「画師」と呼ばれ、制作に関わった者として重要な位置づけにありました。特に、墨描線に沿って彩色を施す彩色者も、画師の一員として機能していました。

絵師の工房と寺院での発展

12世紀に入ると、寺院に仕える絵仏師たちが独立した工房を設けるようになり、鎌倉時代には有力な寺社が各自で絵所や画所を設置しました。東大寺、興福寺、東寺、祇園社など、各寺社には特有の絵所が存在し、それに従事する画師たちが組織されるようになります。このように、画所は単なる宮廷機関から、外部に広がりを見せるものへと変貌を遂げていきます。

室町時代に入ると、土佐家が画所の運営を独占するようになり、その影響は江戸時代にまで及びます。土佐家をはじめとする画師たちは、それぞれの絵所で活動し、代々の技術を伝承していくことになります。しかし、平安時代から続いていた試験制度が技術者の競争を評価する仕組みとして機能していたため、世襲的な動きは薄く、一方で室町時代には特定の家系による固定化が進みました。

画所の場所と近接する工房

画所は、御書所近くに位置していましたが、時代によってその場所は変遷しました。『西宮記』に記された位置は式乾門内東脇であり、他の文献では建春門内東脇とされています。このように、画所は書院と近接し、唐制の影響を受けて展開していたことが示唆されています。平安・鎌倉時代には、画所に所属する画師が貴族から報酬を得て個別に作画を行った記録も残っています。

このように、画所は平安時代から室町時代にかけて、さまざまな歴史的変遷を経ながら、日本の絵画文化に深く根ざした重要な機関として存在し続けました。

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