畑薙第一ダム

畑薙第一ダム

畑薙第一ダム（はたなぎだいいちダム）は、静岡県静岡市葵区に位置する、一級河川・大井川水系に建設されたダムです。このダムは高さ125メートルを誇る中空重力式コンクリートダムで、現在もなお、この型式では堤高が世界一とされています。中部電力が管理する発電用ダムであり、畑薙第一発電所の上池としての役割も担っています。ダムの下には畑薙第二ダムがあり、両ダム間で水を送り合うことで、最大86,000キロワットの電力を発生させることができます。形成されたダム湖は「畑薙湖」と名付けられています。

歴史

大井川水系での電源開発は1902年（明治35年）から始まり、大井川電力から日本発送電へと引き継がれ、戦後は中部電力に受け継がれました。1927年（昭和2年）の田代ダム完成以降は、大規模な水力発電所の建設が続きました。中部電力は揚水発電を採り入れ、大規模プロジェクトを進め、1951年からの計画で1956年には奥泉ダムを、1957年には井川ダムを完成させました。

この流れの中、畑薙第一ダムの建設計画が持ち上がります。険しい峡谷に位置するため、ダム内に発電所を組み込むことで建設にかかる費用を抑える工夫がなされました。そして、1962年にダムが完成し、同年に畑薙第一発電所も運転を開始しました。発電能力は当初137,000キロワットでしたが、2016年に1号機が廃止されたため、現在は86,000キロワットに減少しています。

周辺環境とアクセス

畑薙第一ダムへのアクセスは、井川ダムから静岡県道60号南アルプス公園線を北上して約27kmの距離にあります。ダム周辺は南アルプス登山の玄関口ともなっており、多くの登山者や観光客が訪れます。特に秋の紅葉シーズンには多くの人で賑わいます。ダムから上流は南アルプス国立公園に含まれ、登山口としての役割も果たしています。

一般車両での通行が制限される区域もあり、アクセスには注意が必要です。そのため、特に二軒小屋などの宿泊施設に宿泊する場合は、特種東海フォレストの送迎バスを利用することができます。また、公共交通機関を利用する場合、静岡駅からのバスでアクセス可能です。

環境と諸問題

畑薙第一ダムは、周囲の環境の影響を受け、堆砂が進行しています。大井川流域では、上流部での土砂流入が影響し、一部の水域が白濁することもあります。この影響は発電時には大きな問題とはなっていませんが、低水取水施設には機能不全が見られることもあるため、浚渫作業が行われています。

ビジュアルとしても、畑薙大吊橋が架けられており、南アルプスへのトレッキングルートともなっています。これにより、ダムは自然景観とも絡み合う存在と言えるでしょう。

畑薙第一ダムは、発電だけでなく、大井川の水源としても重要な役割を果たしており、貯水能力の維持にも気を配られています。水位の低下に伴う取水制限は、地域の水利用に影響を及ぼすため、常に注視されています。全体的に見ても、畑薙第一ダムは、電力供給と環境保護が共存する意義ある存在であり続けています。

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