異母兄弟 (映画)

映画『異母兄弟』の詳細解説

作品概要

『異母兄弟』は、1957年に公開された家城巳代治監督による日本映画です。原作は田宮虎彦の小説で、脚本は依田義賢と寺田信義が担当しました。松竹系で全国公開され、当時の社会情勢や家族関係を深く掘り下げた内容が、観客に大きな反響を呼びました。特に、地方での人気が高かったとされています。

あらすじ

物語は、大正10年を舞台に展開します。主人公である利江は、帝国陸軍の将校である鬼頭範太郎の女中として働き始めます。範太郎は、尊大で残忍な性格の持ち主であり、ある夜、酔った勢いで利江に手を出してしまいます。利江は妊娠し、範太郎は最初の妻を亡くした後、仕方なく利江と結婚します。しかし、彼は利江を妻としてではなく、使用人のように扱います。最初の結婚で生まれた一郎司と剛二郎、二度目の結婚で生まれた良利と智秀の4人の息子たちが登場します。兄弟たちは、父からの愛情を得られず、特に異母兄弟の間には深い溝があります。

戦争が始まると、一郎司、剛二郎、良利は戦地へ送られますが、命を落としてしまいます。残された末っ子の智秀は、父からの虐待に耐えかねて家を飛び出します。二人の息子を失った範太郎は、アルコールに溺れ、家財を失います。長い放浪の末、智秀が実家に戻りますが、父の態度は変わりません。しかし、利江は初めて怒りを露わにします。

スタッフ

監督: 家城巳代治
製作: 栄田清一郎
原作: 田宮虎彦
脚本: 依田義賢、寺田信義
撮影: 宮島義勇
美術: 平川透徹
音楽: 芥川也寸志
録音: 加藤一郎
照明: 浅見良二
編集: 沼崎梅子

キャスト

鬼頭範太郎: 三國連太郎
利江: 田中絹代
一郎司: 西田昭市
剛二郎: 近藤宏
良利: 南原伸二
智秀: 中村賀津雄
つた: 豊島八重子
ハル: 高千穂ひづる
マス: 飯田蝶子

受賞歴

『異母兄弟』は、国内外で高い評価を受け、数々の賞を受賞しています。

1958年
カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭 最高賞（グランプリ）（クリスタル・グローブ賞）
1957年
第12回毎日映画コンクール 女優助演賞 田中絹代
第12回毎日映画コンクール 脚本賞 依田義賢
第31回キネマ旬報 日本映画ベスト・テン9位

テレビドラマ化

『異母兄弟』は、過去に2度テレビドラマ化されています。

1967年
KTVで放送
1975年
* フジテレビ『ライオン奥様劇場』で放送

作品の魅力

『異母兄弟』は、単なる家族ドラマに留まらず、戦争という時代の大きな流れの中で、人間の業や愛憎を描いた作品です。特に、田中絹代と三國連太郎の名演は、観客の心を深く揺さぶります。また、当時の社会背景や家族制度を映し出す貴重な作品としても評価されています。

この映画は、家族の絆や人間の感情の複雑さを描いた名作として、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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