白山社 (飯田市上飯田)

白山社

白山社は、長野県飯田市の風越山に鎮座する神社です。旧社格は県社であり、地域の人々から崇敬を集めています。この神社は、山頂の奥宮と東山麓の里宮に分かれており、広大な境内を有しています。

由緒

白山社の創建は、718年（養老2年）9月9日と伝えられています。越前麻生津の泰澄大師が加賀の白山神社から勧請したとされ、白山の修験者、いわゆる山伏によって信仰が広められたと考えられています。

白山社は、風越山の飯田市側のほぼ全域を占める広大な地域にわたっており、白山本社と称される山頂の奥宮と、東山麓の里宮に分かれています。また、飯田市白山町には遥拝所も存在します。

明治時代初期までは神仏習合の寺社であり、白山妙理大権現と別当天台宗の岩戸山白山寺から成り立っていました。御朱印十国を得ていましたが、1869年（明治2年）の廃仏毀釈により、白山寺は廃寺となりました。

白山社は、古くから在郷の武将の信仰を集めていました。『白山寺記』によれば、1182年から1183年（寿永年間）に源義仲が挙兵にあたって戦勝祈願を行ったとされています。また、1187年（文治3年）から1592年から1593年（天正年間）頃にかけては、坂西氏をはじめ歴代の飯田城主が、神社保護の制札を掲げて土地の寄進や社殿等の造営や再興を支援しました。1934年（昭和9年）10月4日には、県社に昇格しています。

境内

1790年（寛政2年）に寺社奉行に提出された「白山寺自領絵図」には、里宮の仁王門の内側に本地堂、持仏堂、書院などを備えた白山寺の様子が描かれています。裏門から奥宮に至る路沿いには、峯薬師堂と五重塔、不動堂と三重塔、石灯籠、虚空蔵堂、矢立木、八幡社、鳥居、名号石が連なり、山頂の奥宮には随神門、絵馬堂、休所、供所、白山本社（奥宮）、諏訪宮、稲荷堂があります。さらに奥の院には、奥院、狗賓堂、小社などが描かれており、「矢立木より上を神の領域」、「虚空蔵堂より下を仏の領域」とされていたことが分かります。

里宮・参道

廃仏毀釈により、現在里宮に残る建造物は多くありませんが、本殿・拝殿・婚嫁殿・薬師堂・絵馬堂・随身門等が境内に残っています。

随身門

1985年（昭和60年）11月20日に飯田市有形文化財に指定された随身門は、1828年（文政11年）に再建されたと推定されています。間口7メートル、奥行4メートル、高さ11メートルの総欅造、入母屋造、唐破風をもつ三間楼門です。白山寺の堂宇の多くは廃仏毀釈により壊されましたが、旧仁王門が随身門として残されました。唐破風を付けた上層には、飯田藩十一代藩主堀親義が1858年（安政5年）に奉献した「翠濤閣」の扁額が掲げられています。神門の両脇には、左に向かって矢大神、右に左大神が祀られており、上層には天人や魚に乗った人、麒麟、象、松に鶴など、通路天井部分には十二支が刻まれています。

拝殿

1733年（享保18年）に建立された白山寺地堂（護摩堂）が拝殿に転用され、現在も残っています。大工棟梁の宮下半助が和様と禅宗様の技法を取り入れた建物です。

本殿

本殿は、諏訪大社上社本宮の宝殿を移築したものです。

奥宮

国の重要文化財に指定されている奥宮の奥社本殿は、1509年（永正6年）の建築とされています。奥社は、里宮からの参道で標高差900メートルを登った風越山（標高1,535メートル）の標高約1,460メートルの平坦地に建立されています。

本殿

奥社本殿は、三間社流造、こけら葺きで、1509年（永正6年）の建立です。室町時代の造営以来、1590年（天正20年）、1926年（寛永3年）、1669年（寛文9年）、1688年（貞享5年）、1704年（宝永元年）、1731年（享保16年）、1806年（文化3年）、1766年（明和3年）、1838年（天保9年）、1901年（明治34年）などに大小の補修を受けています。1934年（昭和9年）1月30日に国の重要文化財に指定され、1925年（昭和14年）7月20日～1926年（昭和15年）5月31日には根本的な修理工事が行われました。1974年（昭和49年）には屋根こけら葺の全面葺き替えと箱棟の銅板包み直しを行い、近年では2004年（平成16年）・2005年（平成17年）度に屋根葺き替え、腐朽した土台・柱根等の木部補修、扉絵の保存修復などが行われています。

幣殿・拝殿

1731年（享保16年）に建立された本殿に繋がる建物です。大工棟梁は北方村（飯田市北方）の宮下半助です。

随身門

1775年（安永4年）に建立されたと推定される随身門です。

祭神

白山社の祭神は以下の通りです。

伊弉諾命
菊理媛神
大己貴命

例祭

白山社では、年間を通じて様々な祭典が執り行われています。

1月1日 元旦祭
1月15日 達磨祭
2月3日 節分祭
4月29日 春季祈年祭
7月1日 大祓祭
9月1日 風神祭・茅の輪
10月1日 開山祭
10月9日 初九日祭
10月19日 秋季例大祭（湯立神事・どぶろく祭）
10月29日 閉山祭
11月19日 新嘗祭
12月19日 大祓祭

脚注

注釈

出典

参考文献

風越山を愛する会 (2016年5月21日). “風越山物語　連載18”. 南信州新聞: p. 3
村沢武夫「権現山白山社」白山社社務所
「伊那谷地名講座 第6回 飯田の地名と白山信仰」飯田市立中央図書館
『伊那』1983年12月号、伊那史学会
大澤和夫「白山寺・白山神社」、『伊那』第36巻第10号、1988年10月
『國寶白山社奥社本殿修理工事報告書』國寶白山社奥社本殿修理事務所、1940年
飯田市歴史研究所『飯田・上飯田の歴史 上』飯田市教育委員会、2012年
『カミとホトケの交渉史－廃仏毀釈の爪痕ー』飯田市美術博物館、2013年
飯田市美術博物館『飯田・上伊那の民族2』秀文社、2018年、104-108頁。
『国寶白山社奥社本殿修理工事報告書』、国寶白山社奥社本殿修理事務所、1940年6月
『平成16・17年度白山社奥社保存修理工事報告書』白山社奥社保存修理委員会・長野県飯田市教育委員会、2007年3月
丸山誌編集委員会『飯田市 丸山誌』丸山誌刊行委員会、2000年
「角川日本地名大辞典」編纂委員会・竹内理三編『角川日本地名大辞典 20 長野県』角川書店、1990年7月18日。ISBN 4040012003

関連項目

白山神社
風越山 ([[飯田市)]]

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