白糸台車両基地

概要

東京都府中市白糸台二丁目に設けられている西武鉄道の車両基地で、多摩川線に投入される車両の保守や日常的な管理を受け持っています。多摩川線の白糸台駅に隣接しており、同線の運行を支える重要な施設としての役割を担っています。

設備

白糸台駅の南側に広がる敷地面積は4,920平方メートルに及び、最大20両の車両を収容可能です。構内には3本の線路が配置されており、北側から順に洗車線、検査線（ピット）、修繕線が並んでいます。これらの設備は、いずれも2両編成の車両に対応した構造となっています。検査線には長さ45メートルのピットが1本設置されています。また、車両の入出庫に関しては、駅の下り方（競艇場前方面）で本線から分岐する線路を使用します。下り方からは基地へ直接進入・出発できますが、上り方（武蔵境方面）から入庫する際は、一旦引き上げ線を経由する必要があります。構内線路の番号は変遷があり、かつては駅からの連番でしたが、現在は駅側の3線が1番線から3番線、車両基地側の3線が1番線から3番線に区別され、引き上げ線は駅4番線として扱われています。将来的な線番変更の可能性も示唆されています。

配置車両

この車両基地には、固有の所属車両は置かれていません。現在、多摩川線で営業運転に使用されている車両は、本線系統の玉川上水車両基地から借り受けて常駐する形をとっています。常駐しているのは西武鉄道の新101系で、4両編成が4本配置されています。これらは全てワンマン運転に対応した車両で、狭山線で運用される車両と仕様が共通しています。かつては主に多摩湖線で運用されており、多摩川線へ転用される際は小手指車両基地から甲種輸送されていました。

車両運用

多摩川線は他の西武鉄道の路線網と物理的に分断されているため、車両の入れ替えや大規模な検査が必要な際は、本線系統との間で車両を輸送する必要があります。この輸送は、新秋津駅（小手指駅）と武蔵境駅（白糸台駅）の間で年4回ほど実施される甲種輸送によって行われます。本線側から送り込まれた編成は、およそ1年間白糸台車両基地を拠点として多摩川線の運用に就き、翌年の甲種輸送で本線側に戻されるのが一般的なサイクルです。

白糸台車両基地内には、車両の定期検査や重整備を行うための大規模な設備がありません。そのため、車両の車輪を削り直す車輪転削は南入曽車両基地または小手指車両基地へ、より詳細な点検を伴う重要部検査や全般検査は武蔵丘車両検修場へ、それぞれ回送して実施されています。運用中に車輪に「フラット」と呼ばれる平坦な部分が生じた場合は、基地内で研削制輪子を用いて応急的に対応しています。なお、武蔵境駅の高架化工事が行われていた2003年3月から2010年3月の間は、甲種輸送が一時的に中断されました。この期間は、白糸台車両基地に仮設の車体昇降機を設置し、車両から取り外した台車や主要機器を武蔵丘車両検修場まで陸送することで、検査・修繕に対応していました。

歴史

白糸台車両基地のルーツは、1917年（大正6年）10月に多摩鉄道が武蔵境駅と北多磨駅（現在の白糸台駅）の間を開業させた際に設けられた「北多磨機関庫」に遡ります。開設当初は蒸気機関車1両、客車2両、貨車12両が配置されていました。その後、1992年までに名称は「北多摩車両管理所」に改められています。

1927年（昭和2年）8月30日には、多摩鉄道線が（旧）西武鉄道によって買収されたことに伴い、この施設も西武鉄道の車両基地となりました。この会社の名称は、その後の合併などを経て1945年に西武農業鉄道、1946年に現在の西武鉄道となっています。1928年（昭和3年）にはガソリン動車が新たに導入され、当初3両が配置された後、増備されました。1950年（昭和25年）の多摩川線の電化に伴い、構内も電化され、気動車や客車の配置は終了し、電車や電気機関車が新たに配置されるようになりました。1957年（昭和32年）9月をもって、蒸気機関車の配置が廃止されています。

組織上の位置づけも何度か変更されています。1999年（平成11年）3月には組織改正により玉川上水車両基地の管理下に置かれました。2001年（平成13年）3月28日には、北多磨駅が白糸台駅に改称されたのに合わせ、基地名も「北多磨車両基地」から「白糸台車両基地」に改称されました。同年7月9日の組織改正では新宿線車両所の管轄となり「新宿線車両所白糸台車両基地」となりましたが、2023年（令和5年）4月1日からは再び組織変更により「玉川上水車両所白糸台車両基地」となっています。

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