白雲宗

白雲宗の歴史と教義

白雲宗（びゃくうんしゅう）は、中国の北宋末期に成立した庶民向けの仏教教派であり、その歴史は大観年間にまで遡ります。本教派は、清覚（1043年 - 1121年）によって、浙江省の杭州に「白雲庵」として創設されました。この寺院の建立を契機に、白雲宗は急速に勢力を拡大し、一時期は江南一帯で最大の宗派となりました。しかし、明朝が成立した後には、政府による禁圧が始まりました。

開創と発展

白雲宗の創始者である清覚は、孔子の直系の末裔を自称し、儒教と仏教、道教の統合を理念としました。その教義の中心には、『華厳経』が据えられています。清覚は仏教の根本的な教えを発展させ、特に「四果位」から「四果十地」という新たな教義を提唱しました。これは、信者が次第に高められる道を示しています。禅宗と対立する思想を持っていた清覚は、禅の信者からの反発も経験しました。

南宋時代の合法化

南宋時代には、白雲宗は合法な地位を得ることに成功しました。この時期、菜食の奨励や在家信徒の受け入れが進みました。彼らは妻子を持たず、禁欲的な生活を志向しました。寧宗の慶元・嘉泰年間（1195年 - 1204年）には、政府からの弾圧があったものの、宗派自体は存在を維持しました。

元代の衰退と復活

元朝が南宋を滅ぼすと、白雲宗の勢力はさらに拡大しました。その信者は数十万人に達し、宗派の者たちは税金の支払いを拒否する動きも見られました。しかし、この状況は長く続かず、成宗の大徳7年（1303年）には、政府が宗派に対して税の負担を求めてきました。白雲宗は数度の整理を経て、武宗の至大元年（1308年）には再び合法的な地位を得ました。さらに、仁宗の延祐2年（1315年）には、宗主である沈明仁が高い官職を授与されるなど、順調に見えました。しかし、元朝政府による弾圧が再び始まり、延祐6年（1319年）には沈明仁が投獄され、翌年には僧侶の還俗が命じられました。英宗の至治3年（1323年）には、白雲宗の土地が没収されました。

明朝との関係

明朝が成立すると、白雲宗は再び禁圧され、最終的には内部崩壊に至ります。その結果、信者の一部は新たに白蓮教へと流れていきます。このように、白雲宗の歴史は興隆と衰退を繰り返し、庶民仏教としての特異な存在感を保ちながらも、時代の波に翻弄されていったのです。

参考文献

白雲宗に関する文献も多く残されており、例えば、原口徳正の『白雲宗は僞装摩尼教なり』や、重松俊章の『宋元時代の白雲宗門』などが挙げられます。加えて、小川貫弌による複数の研究が、この宗派の活動や社会的背景を明らかにしており、研究者たちにとって重要な資料となっています。

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