白馬高地の戦い

白馬高地の戦い

白馬高地の戦い（はくばこうちのたたかい、英語: Battle of White Horse Hill）は、朝鮮戦争中の1952年10月6日から14日にかけて、現在の韓国・鉄原（チョルウォン）付近の395高地を巡って、国連軍（主に韓国軍）と中国人民志願軍の間で行われた激戦です。

戦いの背景

1952年、鉄原-金化地区では、国連軍と中国人民志願軍が対峙していました。この地域は、ソウルへの主要な侵攻ルートを防御する上で非常に重要な位置を占めていました。国連軍は、鉄原平野を見下ろす要衝である395高地を確保し、中国人民志願軍の侵攻を食い止めようとしていました。

戦略的要衝としての395高地

395高地は、鉄原と駅谷川渓谷を一望できる戦略的な高地でした。この高地を失うことは、国連軍にとって大きな脅威となり、西側の第1軍団の側面を晒し、ソウルへの侵攻経路を開けることにもなりかねませんでした。一方、395高地を確保することで、国連軍は軍事境界線を北に押し上げ、中国人民志願軍の陣地を弱体化させることができました。

戦闘の経過

事前の情報と準備

10月3日、中国人民志願軍の投降兵から、395高地に対する大規模な攻撃計画が明らかになりました。この情報を受けて、韓国軍は防御体制を強化し、予備兵力を配置、砲撃支援体制を構築しました。また、戦車や対空砲も高地の側面に配備し、中国人民志願軍の接近を阻止する準備を整えました。

激戦の幕開け

10月6日、中国人民志願軍は395高地への攻撃を開始しました。中国人民志願軍は、砲撃支援を受けながら、複数方向から高地に迫り、国連軍は、正確な砲撃と勇猛な戦いで、中国人民志願軍の攻撃を撃退しました。しかし、中国人民志願軍は攻撃の手を緩めず、連日夜を徹して波状攻撃を仕掛けてきました。高地の主は何度も入れ替わり、熾烈な戦いが繰り広げられました。

繰り返される攻防

戦闘は14日間に及び、12回もの大規模な攻防戦が展開されました。国連軍は砲兵支援と航空支援を駆使し、中国人民志願軍の攻撃を食い止めようとしましたが、中国人民志願軍も圧倒的な兵力と激しい攻撃で、高地の奪取を試みました。

特に激戦となったのは、以下の攻防戦でした。

第1次攻防戦: 中国人民志願軍は、116門の山砲、野砲、榴弾砲、自走砲、戦車8両の支援の下、5方向から攻撃を開始。しかし、国連軍の強力な対砲兵射撃と戦車部隊の活躍により、中国人民志願軍の攻撃は撃退されました。
第2次攻防戦: 中国人民志願軍は、予備部隊を投入して再び攻撃を開始。国連軍は、陣地を補修する間もなく応戦し、激しい射撃戦と手榴弾戦が繰り広げられました。最終的に、国連軍は増援部隊を投入し、中国人民志願軍を撃退しました。
第3次攻防戦: 中国人民志願軍は、1,000発以上の砲撃後、再び攻撃を開始。国連軍は、戦術爆撃を要請し、全砲兵火力を集中して応戦。激戦の末、中国人民志願軍を撤退させました。
第4次攻防戦：中国人民志願軍は、無名高地を確保して戦力を増強し、駱駝稜線を奪取、これにより395高地の防衛が危機的状況になりました。その後、395高地は中国人民志願軍に占拠され、国連軍は反撃に出て奪還に成功しました。
第5次攻防戦：早朝、濃い霧の中、中国人民志願軍は再び攻撃を開始。一時的に国連軍は高地を奪われますが、激しい反撃で奪還に成功しました。
第6次攻防戦：中国人民志願軍は新たな部隊を投入し、国連軍に損害を与え、395高地を占拠しますが、国連軍は増援部隊を投入し、激しい戦いの末に奪還しました。
第7次攻防戦：中国人民志願軍は、濃霧を利用して攻撃を開始。手榴弾戦や白兵戦が繰り広げられ、一時は高地を奪われますが、国連軍の反撃により奪還されました。
第8次攻防戦：中国人民志願軍が再攻撃。国連軍は特攻隊を編成し、手榴弾攻撃で高地を奪還しました。
第9次攻防戦：中国人民志願軍が攻撃。国連軍は反撃し、高地を奪還しましたが、激戦が続きました。
第10次攻防戦：中国人民志願軍の攻撃により、国連軍は再び高地を失いますが、その後反撃で奪還しました。
第11次攻防戦：国連軍は高地を奪還しましたが、中国人民志願軍は直後に逆襲。しかし国連軍は侵入を阻止し、高地を維持しました。
第12次攻防戦：夜間、中国人民志願軍は攻撃を仕掛けますが、国連軍は陣地を守り抜き、最終的に高地を確保しました。

戦いの終結

10月14日、国連軍は最後の総攻撃を仕掛け、ついに395高地を完全に奪還しました。中国人民志願軍は、この戦いで多大な損害を出し、戦線から撤退しました。

戦いの要因

韓国軍が勝利できた要因は、以下の点が挙げられます。

事前の情報と準備: 中国人民志願軍の攻撃計画を入手し、防御体制を強化したこと。
強力な火力支援: 米軍の砲兵部隊と航空支援が、中国人民志願軍に大きな損害を与えたこと。
将兵の士気と勇敢な戦い: 韓国軍兵士は、激戦の中で勇猛に戦い、高地の奪取を阻止しました。
指揮官のリーダーシップ: 指揮官は部隊を鼓舞し、的確な判断で戦いを有利に進めました。

戦いの影響

白馬高地の戦いは、朝鮮戦争における重要な戦いの一つであり、国連軍が中国人民志願軍の攻勢を食い止める上で大きな役割を果たしました。また、この戦いでの韓国軍の勝利は、韓国軍の能力向上と士気高揚に大きく貢献しました。戦後、この戦いに因んで高地は「白馬高地」と呼ばれるようになり、韓国軍の第9師団も「白馬部隊」と称されるようになりました。

戦いの損害

この戦いでの国連軍の死傷者数は約3,000名に上りましたが、中国人民志願軍も多大な損害を被りました。中国人民志願軍の損害記録には大きな差がありますが、多くの捕虜が、攻撃に参加した中隊の多くが戦闘の2日後には20名未満に減少したと証言しています。また、戦死者の数は負傷者の数をはるかに上回ったとされています。

関連事項

破虜湖の戦い：同じく朝鮮戦争中の激戦の一つです。
断腸の稜線の戦い：朝鮮戦争中の高地戦で、アメリカ軍が大きな被害を受けた戦いです。
ポークチョップヒルの戦い：朝鮮戦争末期に起きた高地争奪戦です。

参考文献

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