百年シリーズ

森博嗣『百年シリーズ』解説

『百年シリーズ』は、森博嗣氏が手掛ける小説シリーズで、一部作品はスズキユカ氏によって漫画化、またNHK-FM『青春アドベンチャー』にてラジオドラマ化もされています。

概要

作者の著作やホームページでは、主人公の名前にちなんで「M&R series」とも表記されます。森博嗣氏の作品らしく推理小説の要素を持ちながらも、SF的なガジェットが登場するのが特徴です。初期の2作は、サエバ・ミチルを主人公とした冒険譚で、特殊設定ミステリーの先駆けとしても評価されています。

幻冬舎から2作目が刊行された際、作者の公式ブログで「3作目は東京が舞台で一番面白い作品になる」と予告されましたが、残念ながら中止となりました。その後、新潮社、講談社からシリーズが刊行され、3作目は講談社のみで発行されています。

初期の2作は、森博嗣氏の作品を初めて読む読者にも親しみやすい内容ですが、作中には「すべてがFになる」をはじめとする他のシリーズとの関連も示唆されており、氏の著作全体におけるターニングポイントとも言えるでしょう。作者は、最終巻が自身の長編小説の最終作になる予定であると述べていました。

ストーリー

物語の舞台は、エネルギー技術が発展し、都市国家のような国々が点在する世界。エンジニアリング・ライタのサエバ・ミチルとパートナーのウォーカロン・ロイディは、取材のために訪れる異国の地で、数々の不可解な事件に巻き込まれていきます。

主な登場人物

サエバ・ミチル

エンジニアリング・ライタ。日本人で、片目が義眼。小柄で十代にも見える容姿をしています。優秀な頭脳を持ちますが、思考が暴走する一面も。感受性が強く、他者への深い共感を示す一方、自己評価が低い傾向があります。過去のトラウマに苦しめられながらも、ロイディをパートナーとして、様々な事件に立ち向かいます。
ロイディ

ミチルのパートナーであるウォーカロン。ミチルとの対話を通じて急速に知能が発達しており、彼女にとってかけがえのない存在となっています。旧式のため運動能力は高くありませんが、天気を正確に予測する能力を持ちます。
クジ・アキラ

ミチルの元恋人。物語開始時点で既に亡くなっています。

ウォーカロンとは

自律型のヒューマノイドであり、人間と区別がつかないほど精巧なものも存在します。「ウォーク・アローン(Walk Alone)」が名前の由来であることが示唆されています。

その他のキーワード

ミチルのゴーグル

ゴーグル型のヘッドマウントディスプレイで、地図の表示や照準などに利用されます。
防護服

エアバッグ内蔵のジャケット型防護服。
国家

小規模な都市国家が点在する世界。
エナジィ

エネルギー、主に電力のこと。

各巻情報

女王の百年密室

外界から隔離された都市ルナティック・シティを舞台に、ミチルが都市の社会システムと自身の過去に隠された真実を解き明かします。
迷宮百年の睡魔

一夜にして森が消えた島、イル・サン・ジャックで発生する殺人事件に、ミチルとロイディが挑みます。女王メグツシュカの真意とは何か？
赤目姫の潮解

奔放なイメージで構築された異色の哲学的幻想小説。黒い髪白い肌の赤目姫、緑目王子、紫王と、彼らが見る人形世界が描かれます。

関連情報

関連項目
進行波炉
コアレスモータ
ゲーテッドコミュニティ
ユートピア
ディストピア
関連シリーズ
S&Mシリーズ
Vシリーズ
四季シリーズ
Gシリーズ
Wシリーズ

『百年シリーズ』は、SFとミステリーが融合した独特の世界観と、魅力的なキャラクターたちが織りなす物語で、多くの読者を魅了し続けています。

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