皇代暦

『皇代暦』（こうだいれき）は、南北朝時代から室町時代にかけて成立した年代記です。当初は洞院公賢によって編纂され、後に甘露寺親長が増補したことで、現在の形になったとされています。江戸時代には徳川光圀によって『歴代皇紀』（れきだいこうき）という表題が与えられました。

内容は神代から後土御門天皇の文明9年（1477年）までを記述しており、当時の政治、経済、文化を知る上で貴重な資料となっています。甘露寺親長から後土御門天皇に献上された原本は全5巻でしたが、現存していません。しかし、江戸時代に柳原紀光が原本から写本したものが宮内庁書陵部に所蔵されています。また、尊経閣文庫には加賀藩主前田綱利所蔵本が残されています。

現存する5巻本の内容構成は以下の通りです。

第1巻：神代 - 宇多天皇
第2巻：醍醐天皇 - 堀河天皇
第3巻：鳥羽天皇 - 後鳥羽天皇
第4巻：土御門天皇 - 崇光天皇
第5巻：後光厳天皇 - 後土御門天皇

また、6巻本や7巻本も存在し、それぞれ巻の構成が異なっています。

各ページは5段構成となっており、以下のような情報が記されています。

1段目：天皇の略歴
2段目：皇居や重要な事件
3段目：上皇、東宮、皇子女、后妃
4・5段目：摂政、関白、大臣、将軍、大将などの要職補任

第1巻から第3巻には、唐土の事歴や僧侶の補任が「裏書」として付記されています。この裏書が付いている3巻が、洞院公賢が最初に編纂した形態と考えられています。公賢自身の日記『園太暦』にも、皇代暦の編纂に関する記述があり、第4巻部分を彼が手がけたことが示唆されています。従って、第3巻までは延文以前に成立したと考えられます。

公賢の死後も、皇代暦の編纂は続けられたと考えられていますが、現在の形にしたのは甘露寺親長です。彼は皇代暦を非常に大切にしており、文明8年（1476年）の京都の大火の際には、この本だけを抱えて避難したという逸話が残っています。後に後土御門天皇より書写を命じられた親長が、当時までの出来事を加筆して献上したものが、原本とされたと伝えられています。

『皇代暦』は、成立過程や内容構成から、当時の政治情勢や文化、社会構造を研究するための貴重な史料といえるでしょう。

関連事項

年代記
洞院公賢
甘露寺親長
* 柳原紀光

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