柳原紀光

柳原紀光（やなぎわら もとみつ/のりみつ）は、江戸時代中期の公卿であり、歴史家としても知られています。柳原光綱の子として生まれ、柳原家18代当主となりました。彼の血筋は、柳原前光・愛子（大正天皇生母）兄妹を玄孫に、柳原義光・柳原白蓮異母兄妹と大正天皇を来孫に持ちます。歴史書『続史愚抄』の著者としても知られています。

寛延元年（1748年）に叙爵し、宝暦6年（1756年）には侍従に任じられました。その後、蔵人頭や参議などを歴任し、安永4年（1775年）には権大納言、天明元年（1781年）には正二位に昇進しました。

しかし、天明8年（1789年）に、柳屋大助という偽名で三条通りで質屋を開業していたという嫌疑により、光格天皇から突然の勅勘解官処分を受け、宮廷から追放されるという憂き目に遭います。2年後には復帰を許されたものの、以後は出仕することなく、父の遺した歴史書編纂事業に専念することを決意しました。

柳原家は、藤原北家日野流の名家であり、学問の家として知られていましたが、一時家系が断絶したこともあり、その学問は衰退していました。紀光の父・光綱は、六国史以後、官による正史編纂が途絶え、公家社会による編纂も『百錬抄』（亀山天皇時代）以後途絶えていることを嘆き、自らの手で以後の歴史書編纂を志していましたが、志半ばで病死してしまいます。紀光は、その遺志を継いで歴史書編纂を志したのです。

寛政10年（1798年）、22年の歳月をかけて亀山天皇から先代の後桃園天皇の時代までを扱った歴史書『続史愚抄』81冊を完成させました。また、紀光のもう1つの業績として、貴重な歴史書を写本・校訂し後世に伝えたことが挙げられます。『皇代暦』や『武家年代記』の現在の底本は、紀光が原本から写本したものとされ、原本が失われてしまったとされる今日では貴重なものとなっています。また、六国史の『日本後紀』の現在の諸書も紀光が三条西家から書写・校訂したものが底本になっているという説があります（森田悌説）。紀光が『続史愚抄』編纂のために用いたと見られる史料は柳原家に伝えられて、今日でも東京大学史料編纂所に所蔵されています。

その他には、日記『紀光卿記』（『愚紳』）、随筆『閑窓自語』等が残されており、公家社会や自然科学などに関する紀光の幅広い関心が垣間見えます。

『続史愚抄』完成の前年に出家した紀光は、寛政12年（1800年）に55歳で亡くなりました。

家族

父：柳原光綱
母：郁 - 織田信休四女
妻：勧修寺道子 - 勧修寺顕道の娘
男子：柳原均光（1772-1812）
生母不明の子女
男子：柳原資前
* 女子：淳子 - 日野資矩養女、毛利匡邦継々室、寂照院

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