盲僧琵琶

盲僧琵琶（もうそうびわ）についての詳細

盲僧琵琶とは、盲人の琵琶法師によって演奏される音楽のスタイルであり、宗教的な意味合いを持つ楽曲や語りものを含みます。この音楽は、古代から日本列島に存在し続け、特に奈良時代から伝わるとされています。盲僧琵琶の演奏によって語られる内容は、通常、宗教的なテーマに基づいており、特に仏教の教えに根ざしています。

起源と歴史

盲僧琵琶の起源は、古代アジア大陸から来日した盲人の琵琶法師にさかのぼります。伝説によれば、その開祖は17歳で視力を失った筑前の僧侶、玄清法印（766-823）とされています。彼が演奏する琵琶は、仏教の経典を音楽として表現する手段となり、信者たちに教義を伝える役割を果たしていました。

この音楽の背景には、鳩摩羅什訳『妙法蓮華経』に記された「妙音成仏」という思想があります。これは、楽器や音楽を用いれば仏を供養でき、成仏へと近づくことができるというもので、僧侶たちはこの教えを頼りに琵琶を演奏していました。

宗教音楽から娯楽音楽へ

奈良時代に盲僧の組織が形成されて以来、彼らは琵琶を奏でながら経文を唱える宗教音楽を発展させていきました。しかし、時代が進むにつれて、宗教音楽だけではなく、娯楽的な成分を持つ「くずれ」と呼ばれる語りもの音楽も生まれました。これは、一般の人々に楽しまれるためのもので、盲僧琵琶の重要な側面でした。

その後、盲僧琵琶は九州地方の薩摩国（現在の鹿児島県）や筑前国（福岡県）を中心に広まりました。吉川英史によると、筑前は音楽の中心地であり、そこから盲僧の組織が京都にまで進出したと考えられています。室町時代中期には、薩摩盲僧から武士のための琵琶音楽である薩摩琵琶が発展しました。これにより、語りものとしての形式が確立し、内容も豊かになりました。

筑前盲僧琵琶からの派生

薩摩琵琶は晴眼者によって演奏されるようになり、明治20年代には筑前盲僧琵琶から筑前琵琶が分化しました。筑前琵琶は、そのルーツである盲僧琵琶から宗教性が薄れ、明治時代中期には、特に女性を主な対象とした家庭音楽としてのスタイルが定着しました。また、近年まで詳細が不明だった肥後琵琶も盲僧琵琶の一つの流れと考えられています。

地域の組織と影響

京都を拠点として活動していた盲僧琵琶は、楽琵琶や声明音楽の「講式」を取り入れ、さらには『平家物語』に基づく音楽形態である「平曲」へとつながりました。地域ごとに異なる組織を持っていた盲僧たちは、室町時代から江戸時代にかけて、平曲を演奏する演奏家の団体である当道座と対立したことも知られています。

こうして、盲僧琵琶は歴史の中で形を変えながらも、現代の日本の音楽と文化において重要な役割を果たし続けています。

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