直轄市 (中華民国)

直轄市とは

中華民国における「直轄市」は、行政院の直接管轄下にある特別な第一級行政区画です。地方制度法に基づき、人口が125万人以上で、政治、経済、文化、都市圏の中心としての役割を担う地域が指定されます。現在、台北市、新北市、桃園市、台中市、台南市、高雄市の6市が直轄市として指定されており、これらは「六都」と総称されています。

直轄市の市長またはその代理人は、行政院の閣議に相当する行政院院会に出席し、議決権は持たないものの、意見を述べることができます。また、直轄市の市長選挙は、全国の県・市の首長選挙と同時に行われます。

直轄市の特権

直轄市は、予算や組織人事の面で他の県や市よりも多くの資源と権限を享受しています。特に予算面では、中央政府が税収を調整する際、65%が6直轄市に配分される一方、残りの16県・市には35%しか分配されません。さらに、首都である台北市は、他の直轄市よりも多くの予算を受け取っており、その不公平さが指摘されることもあります。

組織人事面では、直轄市の副市長は通常2人ですが、市の人口が250万人を超えると3人に増員できます。直轄市の下には第二級行政区画は設置されず、第三級行政区画である区が置かれます。ただし、かつて台北市に存在した陽明山管理局は例外的に第二級行政区画でした。

直轄市に属する行政区画は、山地原住民区を除き、地方自治団体としての地位を持ちません。

直轄市の歴史

直轄市制度のルーツは、1921年に北京政府が制定した「市自治制」における「特別市」に遡ります。当初は京都市（現：北京市）と青島市が特別市に指定されました。その後、1930年に「市組織法」によって「院轄市」に改称され、行政院が市長を直接任命するようになりました。1994年には、中華民国憲法に基づき「直轄市自治法」が制定され、院轄市は「直轄市」に改称され、市長は市民の直接選挙で選ばれるようになりました。1999年には、直轄市設立の法的根拠となる「地方制度法」が制定されました。

2010年には、県市合併により新たな台中市、台南市、高雄市が誕生し、台北県が新北市となった際に、この法律に基づいて直轄市に指定されました。2014年には、桃園県から昇格した桃園市も直轄市に指定されました。

中華民国政府の台湾移転前

1928年には、「市組織法」と「特別市組織法」が公布され、市の最高行政機関を「市政府」、最高立法機関を「市参議会」と命名しました。1930年に制定された「市組織法」により、「市」は「院轄市」と「省轄市」の2種類に分類され、院轄市は省と同格、省轄市は県と同格とされました。

1949年の中華民国政府の台湾移転時点で、広州、西安、瀋陽の3市が院轄市でした。これらの都市は省から独立した直轄市であると同時に、省都の役割も担っていました。

中華民国政府の台湾移転後

1949年に中華民国政府が台湾に移転した後、中央政府の各機関は台北市に置かれ、台北市は「戦時首都」とみなされました。1967年には、台北市が院轄市に昇格し、台湾省から分離されました。その後、周辺地域を編入し、現在の台北市の市域が形成されました。1979年には高雄市も院轄市に昇格しました。

1994年には「直轄市自治法」が制定され、直轄市の市長は市民の直接選挙で選出されるようになりました。1999年には「地方制度法」が制定され、直轄市の行政はこの法律に基づいて行われるようになりました。2009年には「地方制度法」が修正され、県と市が直轄市への改編を申請できるようになりました。その結果、2010年には新北市、台中市、台南市、高雄市がそれぞれ直轄市となりました。

また、「地方制度法」では、「準直轄市」制度も規定されており、人口200万人以上の県は、直轄市と同等の権限が認められる場合があります。当初は台北県にこの制度が適用されていましたが、後に桃園県にも適用され、現在はどちらも直轄市に昇格しています。

現在の直轄市

現在、中華民国には以下の6つの直轄市があります。

台北市
新北市
桃園市
台中市
台南市
高雄市

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