電子政府

電子政府（E-government）とは

電子政府（E-government）とは、情報技術、特にコンピュータネットワークやデータベース技術を駆使して、政府の活動を効率化し、国民へのサービス向上を図る取り組みです。単にウェブサイトで情報を提供するだけでなく、オンラインでの行政手続き、電子投票、市民参加型の政策決定など、多岐にわたる分野での活用が期待されています。

電子政府の概要

電子政府の初期段階では、イントラネットの導入による行政内部の効率化や、ウェブサイトを通じた行政情報の公開、サービスの案内などが中心でした。しかし、技術の進歩とともに、より高度な取り組みが進められています。

例えば、住民票の発行や各種申請手続きをオンラインで行えるようにするなど、市民が行政サービスを直接利用できるシステムが構築されています。また、電子投票や市民参加型の政策立案など、民主主義のプロセスにおける情報技術の活用も模索されています。

電子政府は、政府と国民の関係をより緊密にし、行政の透明性と効率性を高めることを目指しています。しかし、その実現には、セキュリティ、個人情報保護、デジタル格差といった課題への対応も不可欠です。

電子政府の分類

電子政府の活動は、その対象者によって以下のように分類されます。

Government to Citizen (G2C): 電子政府から国民、市民へのサービス提供
Government to Business (G2B): 電子政府から企業へのサービス提供
Government to Employees (G2E): 電子政府から職員へのサービス提供
Government to Government (G2G): 電子政府から他の政府機関へのサービス提供
Citizen to Government (C2G): 市民から電子政府へのアクセス、電子行政参加（e-participation）

これらの分類は、電子政府が多岐にわたる関係者を対象としていることを示しています。

各国の電子政府の取り組み

電子政府の取り組みは、世界各国で進められていますが、その進捗度合いは国によって大きく異なります。

ウクライナ

ウクライナでは、2020年にリリースされたアプリ『Diia』が、戦時下においても行政手続きを可能にし、戦場の情報提供や公的証明書の提示に活用されています。これは、デジタル技術が非常時においても社会機能を維持する上で重要な役割を果たすことを示しています。

エストニア

エストニアは、世界で最も先進的な電子政府国家として知られています。ほぼ全ての行政手続きがオンラインで完結し、電子投票も普及しています。2023年の議会選挙では、電子投票率が紙投票率を上回り、若年層の電子投票率も高いことが特徴です。

日本

日本では、2000年代初頭から電子政府の実現に向けた取り組みが開始され、2018年には「デジタル・ガバメント実行計画」が策定されました。近年では、デジタル庁の設置など、デジタル社会への変革が加速しています。行政手続きのオンライン化や、ポータルサイト「e-Gov」を通じた情報提供が進められています。

アメリカ

アメリカでは、1990年代から電子政府の取り組みが始まり、税務申告の電子化や政府調達のオンライン化が進められてきました。また、連邦政府が提供する全ての情報を集約した公式ホームページ「FirstGov」を開設し、国民への情報提供を強化しています。

イギリス

イギリスでは、全行政手続きの電子化を目標とした計画を策定し、政府機関のシステム統合を進めました。また、地方公共団体や医療機関への接続を推進し、電子化された公文書の利用を進めています。

電子政府の課題

電子政府の推進には、以下のような課題が存在します。

セキュリティ: オンラインでの情報漏洩やサイバー攻撃への対策が不可欠です。
個人情報保護: 個人情報の適切な管理と保護が求められます。
デジタル格差: 情報技術を利用できない人への配慮が必要です。
システム連携: 各行政機関のシステム連携と情報共有が重要です。
法的整備: 電子署名や電子文書に関する法整備が必要です。

これらの課題を克服し、より信頼性の高い電子政府を実現することが重要です。

今後の展望

電子政府は、今後もデジタル技術の進化とともに発展していくことが予想されます。AIやブロックチェーンなどの新しい技術の導入も検討されており、さらなる行政効率化と国民へのサービス向上に貢献することが期待されます。

電子政府は、社会のデジタル化を推進する上で重要な要素であり、各国がより良い社会を構築するための取り組みとして、今後もその動向が注目されます。

参考資料

電子政府のガバナンス: 拡張型技術演用枠組みからの一考察 著:藤井秀之、編:東京大学行政学研究会 ISSN 1349-9971
電子国土
再回答不要の原則
行政手続オンライン化関係三法
ワン・ストップ・サービス
裁判手続等のIT化
ヨーロッパにおける電子政府
Gosuslugi、ロシア法律情報の公式インターネットポータル - ロシア
ASAN Imza - アゼルバイジャン
中国:一網通弁（上海）、粤省事（広東省）
インド:National e-Governance Plan

外部リンク

政府指標（国連）'>各国の電子政府指標（国連）
各国における個人を対象としたIT サービスの先進的事例
“電子私書箱（仮称）構想に関連する海外事例” (PDF). 2009年4月28日閲覧。. 2009年4月28日閲覧。)
“電子私書箱（仮称）構想の実現に向けた基盤整備に関する検討会報告書（案）” (PDF). 2009年4月28日閲覧。(42-49ページ). 2009年4月28日閲覧。(42-49ページ))
政府構築計画 - ウェイバックマシン（2005年3月28日アーカイブ分） (PDF'>各府省情報化統括責任者（CIO）連絡会議決定 電子政府構築計画 - ウェイバックマシン（2005年3月28日アーカイブ分） (PDF) （日本、2003年／2004年） （日本、2003年／2004年）)
* 政府』 - コトバンク'>『電子政府』 - コトバンク

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