相念寺

相念寺

相念寺は、富山県南砺市（旧平村）の相倉地区に位置する真宗大谷派の寺院です。

五箇山への真宗の広がり

室町時代後期、本願寺第八代宗主である蓮如上人が越前国の吉崎御坊に滞在した影響により、北陸地方では真宗の信仰が急速に拡大しました。この時期、五箇山地方にも真宗が本格的に根付き始めます。五箇山地域において最初に勢力を広げたのは、越前国にあった和田本覚寺でした。相倉より南、五箇山西部にある多くの寺院や道場は、この本覚寺を本山とする形で出発しています。

本敬寺下の道場として

そうした中で、相念寺の前身にあたる相倉道場は、旧福光町広瀬館地域にあった祖谷の本敬寺を本寺とする道場として歩み始めました。五箇山地域には多くの念仏道場がありましたが、本敬寺に属していたのは相倉道場に加え、利賀谷の奥地にある阿別当道場と大勘場道場のみでした。これは本覚寺を本寺とする道場が圧倒的に多数派であった五箇山において、極めて少数派と言えます。

本敬寺に伝わる由緒によれば、同寺はもともと越中国にありましたが、戦国時代の度重なる戦乱を避け、婦負郡の八尾、利賀の水無、さらに飛騨国の白川（牛首、鳩谷）へと寺基を移転させていたと伝えられています。現在、岐阜県白川村飯島には本敬寺の末寺である敬勝寺が現存しており、この事実は本敬寺が実際に白川郷に寺院を構えていた時期があったことを裏付けています。相倉で本敬寺の門徒が形成されたのは、まさに本敬寺が白川郷にあった頃ではないかと推測されています。

道場の成立と継承

相念寺の縁起によれば、その起源は相倉の図書（ずしょ）という家が、自宅に阿弥陀如来像、親鸞聖人の像、そして蓮如上人直筆とされる六字名号を安置し、祖谷の本敬寺に属する内道場としたことにあるとされています。ただし、本尊と太子像は後に本敬寺へ渡されたと伝えられており、この伝承のみが残っています。

この由緒を裏付けるものとして、天文21年（1552年）に作成された五箇山十日講起請文には、「図書了歓」という人物の署名が見られます。瑞願寺に残る注記によれば、この図書了歓こそが相倉道場の坊（道場主）の先祖であったとされています。以後、相倉道場の道場主は、図書了歓の子孫にあたる九郎三郎家が代々務めていたと考えられています。寛政年間に作成された「五ケ山之道場しらべ」という記録にも、「砺波郡祖谷村本敬寺道揚 相倉村 九郎三郎」と記されており、九郎三郎家が本敬寺に属する相倉村の道場主であったことが確認できます。

相倉西方道場との関係

相倉集落内には、相念寺（相倉道場）の他に、本覚寺を本寺とする道場も存在していました。戦国時代の五箇山西部では本覚寺の門徒が多数派でしたが、本願寺の東西分裂が起こると本覚寺は東方（大谷派）に属し、西方（本願寺派）に属することを望む門徒は鯖江の万法寺を本寺とするようになりました。相倉集落にあったもう一つの道場は、もともと本覚寺門徒でしたが、江戸時代初期に万法寺に転じた門徒によって用いられ、「相倉西方道場」と呼ばれました。これに対し、相念寺を「東方道場」と呼ぶこともあります。

一つの集落内に二つの異なる本寺に属する道場が存在するのは五箇山でも珍しい例です。これは、本覚寺が五箇山西部一帯に広範な門徒を持つ有力寺院であったこと、そして相倉が五箇山本覚寺門徒にとって最も北に位置する地域であったことなどが背景にあると考えられています。

相倉西方道場の伝承によれば、元禄7年（1694年）に木仏尊形（阿弥陀如来像）を安置し拝んだのが起源とされています。現在の相念寺の本堂が安政6年（1859年）に建立された際、その古い内陣（仏壇のある場所）を移築して西方道場が建てられたと伝えられています。

現在の相念寺

現在の相念寺の本堂は安政6年（1859年）4月に建立されたものです。その後、昭和25年（1950年）に後堂（本堂の後ろの部屋）の建て増しが行われ、さらに昭和53年（1978年）には控の間が増築されるなど、何度か改修が行われています。

昭和24年（1949年）3月21日には、「相念寺」という寺号を正式に許され、以降「相倉相念寺」と称されるようになりました。相倉集落の信仰の中心として、現在に至るまでその歴史と伝統を受け継いでいます。

もう一度検索