真貝忠篤

真貝忠篤（しんがい ただあつ）

真貝忠篤は、天保13年（1842年）に生まれ、大正9年（1920年）に没した剣術家です。美濃大垣藩士の家に生まれ、窪田派田宮流の剣客として名を馳せました。大日本武徳会剣道範士でもあります。

生涯

少年期

天保13年1月20日（1842年3月1日）、美濃大垣藩士である真貝吉蔵の七男として江戸藩邸で生まれました。12歳で窪田派田宮流の島村勇雄に入門し、剣術の道を歩み始めます。17歳で両親を亡くし、苦労を重ねながらも剣術の修行に励みました。その才能は師を凌ぐほどになり、師の名から一字を取って「寅雄」と改名したと伝えられています。

維新前後

戊辰戦争では大垣藩に従い、各地を転戦しました。その後、尾張藩帰順正気隊の隊士となります。この頃、悪所での感染が原因で梅毒を患い、鼻が欠損するという苦難も経験しました。戦後は尾張藩校・明倫堂の剣術師範となり、剣術指導に尽力しました。廃藩置県後は、撃剣興行で生計を立てていた時期もあったようです。

明治期

明治15、6年頃に警視庁撃剣世話掛に就任し、その後は宮内省皇宮警察、学習院、慶應義塾といった名門機関で剣道師範を歴任しました。明治41年（1908年）には、大日本武徳会から剣道範士号を授与され、剣道家としての地位を確立しました。また、大日本帝国剣道形制定の委員も務め、剣道の発展に貢献しました。

根岸信五郎、得能関四郎と共に「東都剣道界の三元老」と呼ばれ、明治後期の剣道界において重鎮として認識されていました。得意技が小手斬りであったことから「小手斬り真貝」、また、鼻が欠けていたことから「鼻欠け真貝」という異名でも知られていました。

晩年

晩年は、小西酒造の道場である修武館に招聘され、富山円（直心影流）、美田村顕教（天道流）らと共に修武館奥之形を制定しました。修武館には小学校4年生の時に入門した松本敏夫（剣道範士九段）は、晩年の真貝について、「大先生だというので、きっと偉丈夫のかただと想像していたら、小柄なご老人が改札口からあらわれ、そのかたが真貝先生だという。しかも鼻がお顔についていない。子ども心にびっくりしたのをおぼえているよ」と述懐しています。

大正9年（1920年）、皇宮警察の道場・済寧館へ出勤する途中、脳溢血で倒れ、四谷の自宅で亡くなりました。墓所は青山霊園にあります。

参考文献

戸部新十郎『明治剣客伝 日本剣豪譚』光文社
中村民雄『剣道事典 技術と文化の歴史』島津書房、1994年

関連項目

小西康裕

外部リンク

真貝忠篤に学び一念発起する業精 （小西酒造株式会社）

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