得能関四郎

得能関四郎

得能関四郎（とくのう せきしろう、1842年2月24日 - 1908年7月17日）は、幕末から明治にかけて活躍した日本の武士、剣術家、警察官です。諱は通久。

生涯

幕末

1842年（天保13年）に上野国沼田藩士・得能隼人の子として生まれました。出生地は沼田とも、芝江戸見坂の藩邸とも言われています。1856年（安政3年）、15歳で直心影流の長沼恂教（笑兵衛）に入門し、剣術を学び始めました。長沼は藩の剣術指南役として芝愛宕に道場を構えていました。1862年（文久2年）には、21歳で直心影流の免許皆伝を受けました。

明治維新後

廃藩置県後、東京府の市中取締役となります。1880年（明治13年）に警視局に採用され、警護掛に任命されました。また、撃剣世話掛も務め、警視流剣術の制定に携わりました。

1882年（明治15年）7月6日、吹上御苑での天覧試合で柿本清吉（警視庁）に勝利しました。1883年（明治16年）11月4日には、向ヶ岡弥生社撃剣大会で磯貝昇（憲兵）に勝利。同年12月には、関西剣客代表との対抗戦で高山峰三郎（滋賀県警）に敗れました。1884年（明治17年）6月22日、宮内省済寧館大会で松崎浪四郎と引き分け。同年11月8日、向ヶ岡弥生社全国撃剣大会で松崎と再度対戦し勝利しました。

得能は籠手打ちを得意とし、「籠手打ちの名人」と呼ばれていました。

1886年（明治19年）2月10日、鹿鳴館舞踏会で外務大臣井上馨の警護中、木刀や真剣を持った暴漢の集団が襲撃。得能はステッキで応戦し、犯人11人を逮捕しました。逮捕された犯人のほとんどが手首を砕かれていたと言われています。この事件により、「フロックコートの剣士」として有名になり、以来フロックコートを愛用するようになりました。

晩年

1895年（明治28年）10月、大日本武徳会第1回武徳祭大演武会で奥村左近太に勝利し、同会から第1回精錬証を授与されました。1903年（明治36年）5月、大日本武徳会から第1回範士号を授与され、真貝忠篤、根岸信五郎とともに「東都剣道界の三元老」と称されました。

1906年（明治39年）には大日本武徳会剣術形制定委員を務めました。

1908年（明治41年）7月17日早朝、自宅の寝室で血まみれになって死亡しているのを発見されました。検視の結果、短刀で喉を掻き切った後、刃に付いた血を指で拭い、鞘に納めてから絶命したと判明しました。遺書はなかったものの、同年3月頃から卒中を患っていたため、病苦による自殺と推定されました。享年67。墓所は青山霊園にあります。

年譜

1842年（天保13年）：沼田藩士の子として生まれる。
1856年（安政3年）：直心影流の長沼恂教に入門。
1862年（文久2年）：直心影流免許皆伝。
1871年（明治4年）：東京で市中取締役として勤務。
1880年（明治13年）：警視庁に雇用、警護掛に任命。
1882年（明治15年）：吹上御苑での天覧試合で柿本清吉に勝利。
1883年（明治16年）：向ヶ岡弥生社撃剣大会で磯貝昇に勝利。
1883年（明治16年）：関西剣客代表との対抗戦で高山峰三郎に敗れる。
1884年（明治17年）：宮内省済寧館大会で松崎浪四郎に引き分け。向ヶ岡弥生社全国撃剣大会で松崎浪四郎に勝利。
1895年（明治28年）：大日本武徳会第1回武徳祭大演武会で奥村左近太に勝利。第1回精錬証を授与。
1903年（明治36年）：大日本武徳会から第1回範士号を授与。
1906年（明治39年）：大日本武徳会剣術形制定委員を務める。
1908年（明治41年）：死去。

参考文献

『剣の達人111人データファイル』新人物往来社、2002年。

関連項目

* 自殺・自決・自害した日本の著名人物一覧

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