真鍋八千代

真鍋八千代：興行界を支えた情熱の人

真鍋八千代（まなべ やちよ）は、明治27年（1894年）2月28日に生まれ、昭和50年（1975年）8月5日に没した、日本の実業家、弁護士です。株式会社後楽園スタヂアム（現・株式会社東京ドーム）の第5代社長、日本ボクシングコミッション(JBC)の2代目コミッショナー、世界ボクシング協会（WBA）の終身名誉会長という数々の要職を歴任し、日本の興行界、スポーツ界、映画界の発展に大きく貢献しました。田邊宗英とともに後楽園を一大企業グループに築き上げ、その功績は多岐にわたります。

生い立ちと弁護士への道

愛媛県宇摩郡土居町（現・四国中央市）で、代々神主を務める家柄の末っ子として生まれた真鍋は、幼少期に北海道へ移住。父の死後、長兄に育てられました。中央大学で法律を学んだ後、肺結核を患い療養生活を送りますが、克服後、弁護士を目指し、大正13年（1924年）に司法試験に合格。昭和11年（1936年）には東京弁護士会常議員会議長に就任するなど、弁護士として着実にキャリアを重ねました。

小林一三との出会いと実業界への転身

真鍋の人生を大きく変えたのは、阪急東宝グループ（現・阪急阪神東宝グループ）の創業者、小林一三との出会いです。昭和7年（1932年）、小林の誘いで株式会社東京宝塚劇場（現・東宝）の顧問弁護士を引き受けたことがきっかけとなり、実業界へ足を踏み入れます。小林は真鍋の実業家としての才能を見抜き、その後の活躍を後押ししました。

後楽園スタヂアム再建への貢献

後楽園スタヂアムは、プロ野球の不人気により経営不振に陥っていました。真鍋は東宝の代理人として経営陣の紛争解決に奔走し、渋沢秀雄、五島慶太らの協力を得て事態を収拾。自身も監査役に就任し、実質的な経営を担うことになります。第二次世界大戦中は苦しい経営状況が続きましたが、田邊宗英を社長に迎え、二人三脚で後楽園の再建に尽力。後楽園球場を拠点にプロ野球の発展に貢献する傍ら、後楽園競輪場、後楽園遊園地の建設にも着手し、事業を拡大していきました。田邊の死後、昭和32年（1957年）に社長に就任。後楽園ホール、石打後楽園スキー場（現・舞子スノーリゾート）、熱海後楽園を設立するなど、後楽園の発展に大きく貢献しました。

特に熱海後楽園の設立は、当時の熱海市長、小松勇次の熱烈なオファーと地元住民の協力により実現。真鍋は、夜の都として知られていた熱海を、家族で楽しめる観光地へと変貌させました。

ボクシング界への貢献

真鍋は、日本ボクシングコミッション設立にコミッショナー諮問委員として参加した後、2代目コミッショナーとして、先代田邊宗英の遺志を引き継ぎ、田辺ボクシングクラブ、後楽園ホールを設立。18年の在任期間中、日本のプロボクシング界を世界的なマーケットへと成長させ、多くの日本人世界チャンピオンを輩出しました。東洋ボクシング連盟(OBF)の会長も務め、その功績から世界ボクシング協会(WBA)終身名誉会長に就任しました。

その他の業績

後楽園以外にも、日本テレビ、大映、東宝、新東宝、新宿コマ劇場、東京タワー、野球体育博物館（現・野球殿堂博物館）、逸翁美術館（現・阪急文化財団）の設立に携わるなど、その活動は多岐にわたります。財政難に陥っていた長島温泉を救済するなど、実業家、弁護士の両面から社会に貢献しました。読売新聞の社主、正力松太郎とは親密な関係を築き、日本テレビ設立の際には協力者の一人となりました。

真鍋八千代は、その卓越した経営手腕と情熱によって、日本の興行界、スポーツ界、映画界の発展に多大な貢献を果たした人物として、その名が語り継がれています。

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