矢倉沢往還

矢倉沢往還の歴史と地理

概要

矢倉沢往還（やぐらざわおうかん）は、江戸時代に整備された道で、江戸城の赤坂門から相模国を経て駿河国沼津宿に至る街道です。この道は、東海道の脇往還としても機能しており、また江戸から大山への参詣者にとっても重要な道となりました。そのため、「大山街道」や「大山道」とも称されることがあります。現在の青山通りや国道246号がほぼこの旧道に沿っています。

歴史

矢倉沢往還は、律令時代において既に駿河国と相模国を結ぶ重要な道であり、「足柄道」または「足柄路」と呼ばれていました。この道は、747年ごろに編纂された万葉集にも登場することから、少なくとも8世紀には人々に利用されていたと推測されます。しかし、富士山の延暦噴火により一時通行が難しくなりましたが、その後、復旧されました。以降、鎌倉時代にはこの道は官道として機能し、1336年には箱根・竹ノ下の戦いの舞台ともなったことから、その戦略的な重要性が伺えます。

江戸時代には、矢倉沢往還は東海道の脇往還として利用され、天正18年には矢倉沢関所が設置されました。ここでは、駿河国への旅人の通行を制限し、特に女性の通行に関して厳しい規制が敷かれました。江戸時代中期になると、大山への参詣者が増加し、この道は「大山街道」としての名を冠するようになりました。現在でも神奈川県内の旧道にその名が定着している地点が多くあります。

地理

平安時代における足柄峠を通るルートには、関本、松田、波多野、糟屋、小野、金田の渡し、入谷、新開、鶴間、五貫目、店屋、豊島などが含まれます。江戸時代の主要な宿場は、人馬継ぎ立場、三軒茶屋、二子・溝口、荏田、長津田、下鶴間、国分、厚木、伊勢原、曽屋、千村、松田惣領などがあり、旅人にとっての休息地として機能していました。また、善波峠や足柄峠といった峠も、通行の際に重要な地点として扱われていました。

現在の状況

現在の神奈川県南足柄市には「矢倉沢」と呼ばれる地名が残っており、近隣の旧道は「足柄古道」として整備されています。しかし、大正時代に国道246号として整備された部分では、往時の面影を辿ることが難しくなっています。1969年には東名高速道路と首都高速3号線も開通し、この街道は日本の交通における重要な位置を占めています。矢倉沢往還は、その歴史的背景を持ちながらも、現代においても交通の要所としての役割を果たし続けています。

もう一度検索