矢矧 (防護巡洋艦)

矢矧（やはぎ）について

矢矧（やはぎ）は、日本海軍における二等巡洋艦、通称軽巡洋艦です。この艦は日本海軍の早期軽巡洋艦の一つであり、筑摩型防護巡洋艦の二番艦として位置づけられています。また、法的には筑摩型巡洋艦の三番艦にあたります。その艦名は長野県から岐阜県を通り愛知県に至る矢矧川から採られています。

艦歴の概略

矢矧の建造は1910年6月に三菱造船所で始まり、1911年10月に進水、1912年に竣工しました。日本海軍の巡洋艦として初めてタービン機関を搭載した艦であり、同型艦には異なる機関が搭載されています。矢矧はパーソンズ式蒸気タービンを使用し、4機4軸推進を実現しました。

艦歴の中で特筆すべきイベントがいくつかあります。まず、1915年12月には横浜沖で特別観艦式が行われ、供奉艦として重要な役割を果たしました。第一次世界大戦中は南洋諸島占領作戦にも参加し、南シナ海やインド洋での任務にも従事しました。

1917年11月にはオーストラリアのフリーマントル近くで、沿岸砲からの誤射を受ける事件が発生しました。この時、矢矧の艦長はオーストラリア政府から謝罪を受けています。

親王の巡幸と流感禍

1922年には大正天皇の皇太子が乗艦し、特別な行軍を支援しました。矢矧が供奉艦として活躍し、皇太子の行動に同行しました。しかし、1923年からは主に中国水域の警備に従事します。

一方で、矢矧は1918年のインフルエンザ流行、いわゆるスペインかぜの影響を大きく受けました。艦内では感染者が続出し、最終的には多くの乗員が命を落とす事態となりました。シンガポールでの入港中、艦内の衛生状態が悪化し、乗員は閉じ込められることになります。無事、艦が他の艦艇に交代するときには、咳き込み病人であふれる状況でした。

終戦後と解体作業

1940年には除籍され、以後は呉海兵団の練習船として使用されました。1943年には海軍潜水学校での訓練にも貢献し、最終的には1947年に解体作業が行われました。

記念と奉納

さらに、矢矧にはいくつかの珍しい遺物が現存しています。矢作神社には1/100の艦模型が奉納され、これは乗組員が神社に参拝した記念として製作されたものです。また、艦首には「菊の御紋章」が取り付けられており、これは現在も大阪護國神社で展示されています。

総じて矢矧は日本海軍における重要な艦艇であり、歴史的な意義を持つ存在ですが、その艦歴には苦難も多く含まれています。

もう一度検索