矢野口駅

東京都稲城市矢野口に所在する矢野口駅は、東日本旅客鉄道（JR東日本）南武線の駅です。駅にはJN 17という駅番号が付与されています。南武線が東京都内を走行する区間の中で最も南に位置しており、ここから先の東京都内の区間はJR八王子支社の管轄となります。

歴史

矢野口駅の歴史は、1927年（昭和2年）11月1日に南武鉄道が登戸駅から大丸駅（現在の南多摩駅付近）までを開通させた際に、その一駅として開設されたことに始まります。その後、1944年（昭和19年）4月1日には南武鉄道が国有化され、運輸通信省（現在の国土交通省の前身）南武線の駅となりました。国鉄が分割民営化された1987年（昭和62年）4月1日からは、JR東日本の駅として新たなスタートを切りました。施設の近代化も進められ、1993年（平成5年）9月17日には自動改札機が導入され、利用が開始されました。ICカード「Suica」が使えるようになったのは2001年（平成13年）11月18日のことです。駅の大きな変化としては、南武線の連続立体交差事業に伴う高架化が挙げられます。まず、2004年（平成16年）7月25日に下り線ホームが高架に切り替わり、続いて2005年（平成17年）10月9日には上り線ホームも高架化が完了しました。この高架化の完成と同時に新しい駅舎の使用が始まりました。地域にちなんだ発車メロディの導入も行われ、2014年（平成26年）11月29日からは「稲城繁盛節」が使用されるようになりました（この発車メロディの使用は2025年3月14日までの予定です）。また、駅サービスの変化として、2016年（平成28年）10月30日をもって「みどりの窓口」の営業が終了しました。近年の設備更新としては、2023年（令和5年）11月25日からホームドアとしてスマートホームドアが導入され、使用が開始されています。

駅構造

現在の矢野口駅は、高架上に設けられた島式ホーム1面2線の構造を持つ駅です。高架化が完了する前の2004年 7月24日までは、地上に相対式ホーム2面2線が配置されており、ホーム間は跨線橋で連絡し、改札口は立川方面行きのホーム（1番線）の川崎寄り端にありました。高架化後は、バリアフリーに対応した設備が充実しています。改札階とホーム階を結ぶエスカレーターとエレベーターが設置され、改札内のコンコースには車椅子でも利用しやすい多機能トイレが整備されました。駅の運営体制としては、JR中央線コミュニティデザインが駅業務を請け負う業務委託駅であり、立川統括センターの管理下にあります（2021年3月31日まではJR東日本ステーションサービスが受託していました）。全時間帯に改札係員がいるわけではなく、「お客さまサポートコールシステム」が導入されており、一部の時間帯は遠隔での対応となります。駅には自動券売機、多機能券売機、指定席券売機、そして自動改札機が設置されており、利用者はこれらの機器で乗車券などの購入や改札通過を行います。駅の高架下空間は有効活用されており、2007年9月14日にはジェイアール東日本都市開発によって「アイポート矢野口」というショッピングセンターが開業しました。以前は南武線の快速列車も停車していましたが、2014年 3月15日のダイヤ改正で快速の運転区間が拡大されたことに伴い、矢野口駅は快速通過駅となりました。

利用状況

矢野口駅の一日の平均乗車人員は、近年増加傾向にあります。2023年度（令和5年度）には8,903人の平均乗車人員を記録しました。興味深いのは、2002年（平成14年）までは稲城市内にあるJR駅（当駅、稲城長沼駅、南多摩駅）の中で最も利用者が少なく、減少傾向も見られていたことです。しかし、駅周辺の再開発が進んだ2003年（平成15年）以降は、利用者数が緩やかに増加に転じました。現在では、以前は快速停車駅であった稲城長沼駅よりも乗車人員が多くなっており、稲城市内のJR駅の中では矢野口駅が最も利用者の多い駅となっています。

駅周辺

駅舎のすぐ隣には鶴川街道（東京都道19号町田調布線）が通っており、約50メートルほど南下すると川崎街道（東京都道9号川崎府中線）との交差点があります。高架化される以前の鶴川街道は片側一車線で歩道がなく、駅のすぐ横に踏切があったため、慢性的な交通渋滞が発生していました。高架化工事はこの渋滞を解消することを目的の一つとしており、これに合わせて鶴川街道の拡幅やバイパス道路の整備も行われました。現在も駅周辺には、かつて鶴川街道が狭かった頃の名残を見ることができます。駅周辺には商業施設も立地しています。駅から徒歩約10分ほどの場所にある東京コカ・コーラボトリングの工場跡地には、2007年 11月8日に「アメリア稲城ショッピングセンター」がオープンしました。この施設には、スーパーマーケットの三和を核店舗として、マツモトキヨシやザ・ダイソー、くまざわ書店など、様々な店舗が入居しています。また、京王電鉄の京王よみうりランド駅へも、矢野口駅から徒歩でおよそ15分程度の距離です。駅前広場は現在も整備が進められています。前述の高架下ショッピングセンター「アイポート矢野口」には、スーパーマーケットのフジをはじめ、ヘルスケアセイジョー、銀座メガネコンタクトなどのテナントが入っています。

隣の駅

JR東日本南武線において、矢野口駅は各駅停車の停車駅です。快速列車は当駅を通過します。各駅停車における隣の駅は、川崎方面が稲田堤駅（JN 16）、立川方面が稲城長沼駅（JN 18）です。

備考

過去には、鶴川街道上に「矢野口駅」停留所と「矢野口」停留所、駅北口前に「矢野口駅北」停留所といったバス停がありましたが、2011年2月28日をもって廃止されています。また、矢野口駅は、1976年公開の日本映画『君よ憤怒の河を渉れ』のロケーション撮影に使用されたことでも知られています。

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