矢野康治

矢野康治：日本の財政を憂う元財務事務次官

矢野康治（やの こうじ）は、1962年12月10日生まれの日本の財務官僚であり、元財務事務次官です。山口県下関市出身で、1985年3月に一橋大学経済学部を卒業しました。大学時代は庭球同好会に所属し、経済原論のゼミで学んでいます。卒業論文のテーマは「非自発的失業の解明」でした。

キャリア

1985年に旧大蔵省（現財務省）に入省し、大臣官房文書課に配属されました。その後、小樽税務署長、国税庁長官官房課長補佐などを経て、ハーバード大学研究員として海外での経験も積んでいます。1994年からは証券局課長補佐として、寝食を忘れて働き、証券版金融ビッグバンの策定に大きく貢献しました。

一般会計の歳出と税収の推移をワニの口に例えたことでも知られています。また、内閣官房長官秘書官として、町村信孝、河村建夫、与謝野馨、菅義偉といった政治家を支えました。特に、与謝野馨大臣の「不安のない社会保障制度を確立するために」という目標に共鳴し、消費税率を8％、10％に引き上げる3党合意の成立に尽力しています。

2017年7月には財務省大臣官房長に就任。2018年4月には、福田淳一前財務事務次官のセクハラ疑惑が発覚し、辞任。矢野が事務次官事務代理を務めました。セクハラ疑惑については、当初は事実を認めなかったものの、後に事実を認定し、調査を打ち切りました。

2019年7月には財務省主税局長、2020年7月には主計局長に就任しました。2021年7月8日には、一橋大学出身者として初の財務事務次官に就任しました。財務省内では厳格な財政再建論者として知られ、「原理主義者」と評されることもあります。一方で、「自分が正しいと思ったら、上司や政治家にも直言する人物」として知られています。

2022年6月24日に財務事務次官を退任し、財務省顧問に就任しました。その後、国立大学法人一橋大学顧問、日本生命保険特別顧問などを務めています。退官後は、講演活動を通じて日本の財政問題に対する警鐘を鳴らし続けています。

「バラマキ合戦」発言

2021年10月、月刊誌『文藝春秋』に寄稿した記事で、新型コロナウイルス感染症の経済対策を「バラマキ合戦」と表現し、国家財政の破綻を強く警告しました。また、積極財政論を「とんでもない間違い」と批判し、基礎的財政収支の黒字化を主張しました。この発言は大きな波紋を呼び、第83回文藝春秋読者賞を受賞しました。

評価と人物像

矢野康治は、そのキャリアを通じて、日本の財政問題に真摯に向き合ってきた人物として評価されています。特に、証券版金融ビッグバンの策定や消費増税の実現に貢献した功績は大きいでしょう。また、事務次官の立場でありながら、財政問題について積極的に発言する姿勢は、多くの人々に影響を与えました。

一方で、その厳格な財政再建論は、時に批判も浴びています。しかし、矢野は自らの信念に基づき、日本の未来のために、財政健全化の必要性を訴え続けています。

同期入省者

1985年入省組は「ロクマル」と呼ばれ、優秀な人材が揃っていたと評されています。同期には、可部哲生（国税庁長官）、岡村健司（IMF副専務理事）、藤井健志（内閣官房副長官補）、中島淳一（金融庁長官）など、多くの幹部を輩出しています。矢野は、その中でも特に注目を集める存在でした。

著書

『決断!待ったなしの日本財政危機―平成の子どもたちの未来のために』東信堂 2005年

関連項目

森友学園問題

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