矢風 (標的艦)

矢風（やかぜ）

矢風は、日本海軍に所属していた艦で、峯風型駆逐艦の6番艦として1920年に竣工しました。艦名は、矢が飛んでいる際に生じる風に由来しています。同艦は戦後に解体されましたが、その艦歴は興味深いもので、特に駆逐艦から標的艦への転身が注目されます。

艦歴の初期

矢風は1920年7月19日に三菱長崎造船所で竣工し、その後は横須賀鎮守府に配属されました。1931年には第2駆逐隊に編入され、一時的に第一航空戦隊に参加。翌年の第一次上海事変においての活動にも従事しました。駆逐艦としての役割を果たす中、1937年には兵装の一部が撤去され、無線操縦艦「摂津」としても使用されることになりました。1940年には紀元二千六百年特別観艦式にも参加し、当時の艦史に名を刻みます。

標的艦への改装

しかし、太平洋戦争勃発により標的艦の需要が高まり、元戦艦「摂津」だけでは役割を果たしきれないとの判断から、矢風も標的艦に改装されることとなります。この改装では、兵装が全て撤去され、上部構造物には金網が覆われるなど、爆撃からの防御が施されました。速力は24ノットに達し、機動性は保たれましたが、旧駆逐艦であるため防御は限られていました。1942年に標的艦として正式に認識され、さまざまな訓練に従事しました。

訓練活動の展開

1942年8月から9月には、ルオットで第四空襲部隊の雷撃訓練を支援し、その後も機動部隊の爆撃訓練に系列的に協力しました。1943年には船団護衛任務中に哨戒艇との衝突事故を起こしましたが、修理後には再び訓練活動に参加。特に、サイパンやギルバート方面での専門的訓練に関与し、機動部隊の訓練標的として重要な役割を果たしました。

戦局の変化と最期

1944年から1945年にかけて、矢風は更なる任務を展開しますが、次第に戦況が厳しくなり、艦は横須賀で敵の攻撃を受けて損傷。それによって1945年に終戦を迎えました。終戦後、矢風は長浦湾に係留されていましたが、最終的には浸水により着底。その後、1948年に解体されることになりました。

歴代艦長

艦長には多くの優れた指導者が歴任しており、艦の運命に深い影響を及ぼしました。山田松次郎少佐から始まり、植松練磨、石川哲四郎、そして昭和の艦長たちがその運営に貢献しました。彼らの指導の下で、矢風は様々な危機的状況を乗り越え、艦の役割を全うしていきました。

矢風はその限られた活動期間ながらも、日本海軍の歴史の一翼を担った重要な艦艇として記憶されています。

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