石切神社 (岐阜市)

岐阜県岐阜市下川手に静かに鎮座する石切神社は、古くからこの地に根差す由緒深い神社です。その主祭神は、光り輝く鏡をはじめとする玉や金属器の製作に長けた神様として知られる、石凝姥命（いしこりどめのみこと）をお祀りしています。

創建と歴史を辿る

石切神社の創建に関する正確な年代は、残念ながら歴史の記録にはっきりと残されていません。しかし、古くは美濃国の有力な一族であった土岐氏が深く崇敬するお社であり、もともとは土岐郡に属する大富村の地に祀られていたと伝わっています。

当社の歴史における大きな転換点の一つが、南北朝時代の出来事です。文和2年（1353年）、当時の美濃守護であった土岐頼康公が、新たな統治の拠点として川手城を築城することになりました。この城は、それまで拠点としていた長森城に代わる重要な施設でした。川手城の築城にあたり、城の安泰と繁栄を願うとともに、特に鬼門（北東）の方角からの邪気を祓い除く目的から、土岐頼康公の命により、石切神社は現在の岐阜市下川手の地へと遷座されました。こうして当社は、川手城の鎮守、とりわけ鬼門除けの要としての役割を担うことになったのです。

一方で、石切神社の創建に関する別の説も存在します。平安時代初期にあたる貞観年間（およそ860年頃）に、この地域を治めていた各務氏の祖先とされる各務大領という人物が、一族の守護神として祖神にあたる石凝姥命を祀ったのが、この神社のそもそもの始まりではないか、という考え方です。このように、当社の起源については複数の歴史的な視点があることがわかります。

川手城の鬼門除けとして現在地に遷座して以降、石切神社は地域の信仰の中心としての地位を確立していきます。そして、境内に八幡神社、春日神社、諏訪神社、鹿島神社、香取神社といった、当時この地域で広く崇敬されていた他の神々を合祀するようになり、次第に「六社神社」という別称でも呼ばれるようになりました。これは、複数の重要な神々を一つのお社で共に祀ることで、より強力な守護や広範なご利益を求める人々の願いを反映したものと言えるでしょう。

しかし、時代の流れは再びこの地に変化をもたらします。戦国時代後期にあたる享禄3年（1530年）、美濃国内で勢力を拡大した斎藤道三が、土岐氏を追放し、その本拠地をより強固な稲葉山城（現在の岐阜城）へと移しました。これにより、川手城はその役目を終え、廃城となります。城郭が失われた後も、石切神社は地域の人々の精神的な支柱として変わらず存在し続けました。

江戸時代に入ると、石切神社は厚見郡と羽栗郡にまたがる広範な地域、具体的には10か村もの村々の産土神、すなわちその土地で生まれ育った人々を守護する神様として、厚い崇敬を集めました。時代が下るにつれて、その産土神としての担当区域はより明確になり、厚見郡の領下村、下川手村、上川手村、そして羽栗郡に属する下印食村の一部である大字川手畑といった特定の村落の産土神社としての役割を担うようになりました。

現代に至るまで、石切神社はその歴史と伝統を守り続けています。昭和43年（1968年）には、岐阜県神社庁より銀幣社の指定を受け、改めてその格式と地域における重要性が公式に認められることとなりました。

祭神について

石切神社の主祭神は、冒頭でも触れましたが、石凝姥命（いしこりどめのみこと）です。この神様は、日本神話において天照大神が天岩戸に隠れた際に、思兼神の知恵により、神々が集まって行われた儀式において、美しい鏡を作ったとされる神様であり、金属加工や工芸の神として信仰されています。

境内には、主祭神の他にも様々なお社があり、以下の神々が合祀され、手厚く祀られています。

天孫降臨の中心的人物である迩迩芸命（ににぎのみこと）
天岩戸の神話で祝詞を唱えたとされる天児屋根命（あまのこやねのみこと）
同じく岩戸隠れの神話で太玉串を持ったとされる布刀玉命（ふとだまのみこと）
岩戸の前で舞いを披露し、天照大神を誘い出したとされる天鈿女命（あまのうずめのみこと）
玉作りの神とされる玉祖命（たまのおやのみこと）
食物や穀物を司る豊受大神（とようけのおおかみ）
* 商売繁盛や五穀豊穣の神として広く信仰される稲荷神（いなりのかみ）（境内の厚見稲荷神社でお祀りされています）

これらの神々が共に祀られていることは、当社がかつて「六社神社」と称された歴史的な背景や、地域の人々の多様な願いを受け止めてきた信仰のあり方を示しています。

所在地

石切神社は、岐阜県岐阜市下川手34に位置しています。長い歴史を見守ってきたこの地で、今も地域の人々に親しまれ、参拝者を受け入れています。

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