長森城

長森城と切通陣屋

長森城は、現在の岐阜県岐阜市切通6丁目付近、かつての美濃国長森庄に位置していた日本の城です。平安時代から戦国時代にかけてその歴史を刻み、その後、廃城となった跡地には切通陣屋が築かれました。現在では、「切通陣屋跡」として岐阜市指定の史跡となっています。

長森城の歴史

長森城の歴史は、文治元年（1185年）に、長森庄の地頭であった渋谷金王丸が築城したと伝えられています。その後、南北朝時代の暦応2年（1339年）には、美濃国守護職の土岐頼遠が土岐郡の一日市場館から長森城に移り、城郭としての整備を進めました。これにより、長森城は土岐氏の居城となり、代々土岐氏が城主を務めることとなりました。

城の立地も戦略的に重要でした。北側は京と東国を結ぶ東山道に面し、南側は天正14年（1586年）まで尾張国との国境であった古木曽川に接していました。この地理的条件から、土岐氏は長森城を拠点として尾張北部の支配も視野に入れていたと考えられています。

しかし、文和2年（1353年）になると、長森城が手狭になったため、土岐頼康は新たに川手城を築城し、そこに移りました。その後、長森城は土岐直詮が城主となり、土岐氏の本拠地は川手城へと移されました。

長森城がいつ廃城になったのかは正確にはわかっていませんが、斎藤道三が美濃国を支配し、拠点を稲葉山城に移した頃であろうと推測されています。

切通陣屋

江戸時代に入ると、宝暦5年（1755年）に安藤信成（信明）が加納藩の藩主となりました。しかし、翌年には陸奥国磐城の平へ移封されます。信成は平藩主としてその手腕を発揮し、後に江戸幕府の老中にまで上り詰めました。この功績により、美濃国の厚見郡の一部と方県郡の一部に1万8千石が加増されました。

この加増された美濃国内の領地を治めるために、享和3年(1803年）11月、かつての長森城跡に切通陣屋が築かれました。しかし、明治時代に入り廃藩置県が行われると、切通陣屋は廃止され、笠松県の一部となりました。

知行所

切通陣屋の知行所は以下の通りでした。

厚見郡：切通村、蔵前村、高田村、水海道村、前一色村、北一色村、野一色村、領下村、細畑村、岩地村、日野村、日野新田
方県郡：中村、下西郷村、小西郷村、西改田村、東改田村、又丸村、川部村、上尻毛村、上曽我屋村、下曽我屋村

現在

現在、長森城と切通陣屋の地表上の遺構はほとんど残っていません。しかし、旧中山道の近くにある切通観音とその周辺がかつての城跡であるとされています。この場所は市の史跡として指定されており、石碑などが残されています。長森城と切通陣屋は、地域の歴史を語る上で重要な場所であり、その存在は今もなお、人々に歴史の記憶を伝えています。

参考資料

岐阜市 2020「第6章 岐阜市のまちなみ」『岐阜市まちなか博士初級・上級認定試験公式テキストブック』p.84

土岐氏関連の城

鶴ヶ城 (美濃国)
大富館
浅野館
* 川手城

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