石和鵜飼

石和鵜飼：笛吹川の伝統漁法

石和鵜飼は、山梨県笛吹市石和町を流れる笛吹川で行われている鵜飼です。鵜を操り鮎を獲る伝統的な漁法で、夏の石和温泉の風物詩となっています。

歴史

鵜飼の歴史は古く、『古事記』や『日本書紀』にも記述が見られます。甲斐国（現在の山梨県）では、石和鵜飼が古くから行われていたと考えられていますが、記録は多くありません。

江戸時代の伝承によれば、石和鵜飼は800年前の平安時代に始まったとされています。甲府市川田町の外中代遺跡から出土した暗門絵画土器には、魚をくわえた鳥の姿が描かれており、鵜飼の様子を描いたものと考えられています。

甲斐国では石和鵜飼のほか、荒川で行われていたとされる「忘川」の鵜飼や、桂川の鵜飼が知られています。石和鵜飼は、漁師が川に入って鵜を操る「徒歩鵜」と呼ばれる珍しい形式で行われていました。

鵜飼山遠妙寺との関係

遠妙寺は、石和鵜飼と深い関わりを持つ日蓮宗の寺院です。伝承によると、平時忠が能登国から逃れて当地で漁をしたのが石和鵜飼の始まりとされています。室町時代には、世阿弥が能の演目『鵜飼』を制作し、石和鵜飼の伝承に似た筋書きとなっています。

江戸時代には遠妙寺における鵜飼伝説が広まり、寺は「鵜飼山」と呼ばれるようになりました。寺には漁師・鵜飼勘助が日蓮に救われたという伝承が伝わり、勘助を祀る「漁翁堂」があります。また、寺宝として鵜飼伝説に関わる「七字の経石」や「鵜飼天神像」が伝えられています。

近現代の石和鵜飼

明治時代には月岡芳年が鵜飼伝承を題材とした浮世絵を描いています。しかし、石和鵜飼は近代に一度断絶してしまいます。

高度成長期の1961年（昭和36年）に石和温泉が湧き、観光客誘致のため、1976年（昭和51年）に石和鵜飼が再開されました。現在では、7月下旬から8月中旬に観光鵜飼が行われています。

2005年（平成17年）には笛吹川石和鵜飼保存会が発足し、鵜飼の実演やイベントの実施、鵜小屋の清掃などを行っています。

鵜の飼育施設が老朽化したため、2018年には新しい飼育・訓練施設が建設されました。

漁法の特徴

石和鵜飼の鵜匠は、風折烏帽子に漁服、胸あて、腰蓑という伝統的な装束を身につけています。

石和鵜飼は、鵜匠が川に入り、1 - 2羽程度の鵜を操る「徒歩鵜」と呼ばれる形式で行われます。この漁法は、石和以外では和歌山県の有田川で見られるのみです。

観光鵜飼で使われている鵜はウミウで、茨城県日立市の伊師浜海岸で捕獲されたものです。笛吹川にはカワウが生息していますが、カワウはアユを食い荒らす害鳥として駆除されており、鵜飼には使われていません。

石和鵜飼は、伝統的な漁法を今に伝える貴重な文化遺産です。夏の夜には、幻想的な鵜飼の光景を楽しむことができます。

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