石子順造

石子順造の生涯と業績

石子 順造（いしこ じゅんぞう、1928年10月12日 - 1977年7月21日）は、日本の美術及び漫画評論家として知られています。彼は東京都に生まれ、本名は木村泰典という名前です。石子は戦前からの前衛芸術、アングラ芸術、デザイン、漫画などを対象に精力的に評論活動を行い、その独自の視点で多くの評価を受けました。特に漫画評論においては、彼の活動は先駆的なものであり、その影響は今日まで続いています。

学歴と初期の経歴

東京大学の経済学部を卒業した石子は、大学院で美術史を学びました。卒業後は静岡県の鈴与倉庫に入社し、営業課に勤務しながら評論活動を並行して行いました。1956年から始まったその活動は、個性的な視点でアートや漫画を論じることからスタートしました。

評論活動の展開

1960年には、画家の伊藤隆史や鈴木慶則らと共に評画誌『フェニックス』を創刊しました。この雑誌を通じて、多くの作家や作品を紹介しました。1964年には、鈴与を退職し上京します。その後は本格的に評論活動を行い、『池田龍雄論』などの著作を発表しました。

1967年には、菊地浅次郎、梶井純、権藤晋らと共に日本初の漫画評論同人誌「漫画主義」を創刊しました。この同人誌では、白土三平やつげ義春、水木しげるといった著名な漫画家の作品を取り上げ、評論しました。『漫画主義』は1978年から『夜行』に合併されることとなります。

手塚治虫との論争

同年、彼は手塚治虫が関与する「漫画集団」の閉鎖性や、虫プロダクションの経営について批判する文章を『週刊大衆』に発表しました。この発言に手塚は激怒し、両者の関係は緊迫したものとなりました。石子は手塚との親しい関係を持っていた一方で、意見の対立により険悪な関係に変わってしまったのです。

主な著作とその影響

1974年に出版された著書『キッチュの聖と俗』は、当時のキッチュに関する考察が含まれており、横尾忠則や赤瀬川原平らの作品と共鳴する内容でした。また、石子は現代美術展や大規模なアートイベントにも参加し、影響を与え続けました。

1968年には「トリックス・アンド・ヴィジョン:盗まれた眼」展を中原佑介と共同で企画し、1969年の「第9回現代日本美術展」では審査員を務めました。彼の活動はその後の日本のアート界にも大きな影響を与えています。

最晩年と死後の評価

石子は1977年に肺がんにより東京都豊島区の病院で亡くなりました。死の間際には、特に漫画家のつげ義春に会いたいと願っていたといいます。彼の死後、その評論は多くの人々に引き継がれ、1986年から1988年にかけて『石子順造著作集』全3巻が発刊されました。

彼の著作には、『マンガ芸術論』や『現代マンガの思想』、さらに『子守唄はなぜ哀しいか』などがあり、漫画及び美術に関する深い洞察が盛り込まれています。毎日のように彼の作品が発表されたことで、多くのフォロワーや評論家に影響を与えた彼の業績は、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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