石川寒巌

石川寒巌：大正・昭和期の日本画壇を彩った画家

石川寒巌（いしかわ かんがん、1890年2月11日 - 1936年3月25日）は、栃木県に生まれた日本画家です。本名は石川寅寿。明治から昭和にかけて活躍し、独自の画風で知られています。

郵便局員から画家への道

1890年、栃木県那須郡黒羽町（現・大田原市）で生まれた寒巌は、黒羽尋常小学校、大田原中学校を卒業後、19歳で上京。郵便局員として働きながら、太平洋画会研究所で洋画を学びました。同時に、佐竹永邨に師事し日本画の技術も磨きました。1910年には肺炎を患い、徴兵検査にも不合格となり、郷里に戻り結婚。代用教員として働きながら、雲照寺で参禅し、釈戒光から「寒巌」の道号を与えられます。

1918年には日本南画会に入会。その後、再上京し、小室翠雲に師事しました。1922年には日本南画院に入選し、1924年には院友、1925年には同人となりました。

画家仲間との交流と画風の変遷

1926年からは、小杉放菴、大山魯牛、小堀鞆音、荒井寛方ら著名な画家たちと交流を深めました。1929年には、小杉放菴らが中心となって結成された栃木県出身の画家集団「華厳社」に参加。1932年には『荘子』や『詩経』を研究する「老荘会」にも参加するなど、幅広い交友関係を持っていました。

寒巌の画風は大きく3つの時期に分けられます。初期（1920年～1923年）はオーソドックスな南画の様式でした。中期（1924年～1929年）になると、南画の技法に洋画の写実的な描法や遠近法を取り入れ、多くの風景画を発表しました。晩年（1930年～1936年）には、写実的な表現がさらに深まり、屏風や仏画も制作しました。特に中期以降の作品は、“新南画”として高く評価されています。

急逝とその後

1935年、急性盲腸炎で入院。自宅療養中に、帝国美術院展覧会への無鑑査出品が決まりました。しかし、翌1936年3月25日、47歳という若さで盲腸炎のため亡くなりました。多磨霊園に眠る寒巌の作品は、現在も高い評価を得ており、多くの美術館や資料館で所蔵・展示されています。彼の生涯と作品は、日本の近代日本画史において重要な位置を占めています。

主要作品

（具体的な作品名と簡単な説明を記載）

参考文献

『日本美術年鑑』昭和12年版
茨城県近代美術館編集・発行 『―茨城・栃木・群馬三県交流展― 北関東の文人画』 1995年
黒羽芭蕉の館平成19年度企画展運営委員会編集 『黒羽芭蕉の館平成19年度企画展・アートリンクとちぎ２００７図録　近代黒羽の大画家　石川寒巌』 大田原市黒羽芭蕉の館、2007年10月3日
木村理恵子 鈴木さとみ編集 『[図録] 石川寒巌 作品目録』 栃木県立美術館、2011年

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